【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#572】オザーク高原は、米ミズーリ州南部とアーカンソー州北西部に広がる高原地帯である。鉛や亜鉛、鉄などの鉱脈があることで古くから採掘が盛んであり、肉牛の放牧や林業といった伝統的な経済活動の主要地域として知られている。
この高原では、19世紀から20世紀にかけて「ガウロウ」と呼ばれる謎の生物の目撃が相次いだと言われている。
ガウロウは、アーカンソーの民間伝承に伝わる恐ろしい怪物である。全長およそ6メートル。体色は暗い緑色で、背中に沿って突起が並んでおり、細長い尾を持ち、短い四肢の指先には大きなカギヅメ、その指の間には水かきが備わっていて、口には鋭い大きな2本の牙が生えているという。
ガウロウの記録は、1897年1月31日付の地元紙「アーカンソー・ガゼット」に掲載された記事が最初であると言われている。
記者エルバート・スミシー氏が、実業家のウィリアム・ミラー氏から伝え聞いた情報だ。ミラー氏がアーカンソー州サーシー郡のブランコという町を訪れた際、「ガウロウと呼ばれる怪物が高原から夜な夜な町に降りてきて家畜を襲う」という話を住民たちから聞いたという。
討伐隊を結成したミラー氏たちが雪の積もる山中を散策すると、川岸に何かを引きずったかのような重々しい跡を発見し、たどっていくとそこには洞窟があった。内部には、襲われたであろう家畜の骨などが無数に散乱していたため、ここがガウロウのすみかだと判断し、岩陰で怪物が戻ってくるのを待った。すると、30分ほど経過して恐ろしい形相をした怪物が川からやってきたのである。
一斉発砲によって怪物は苦しみもだえ、一人の隊員の足を引きちぎり周辺の木々も引き裂き抵抗し、さらなる発砲によってついに絶命。皆はその死骸をブランコまで持ち帰った。
その後、科学的調査のために骨格と皮をワシントンDCのスミソニアン協会へ送ったというが、残念ながら届くことなく行方知れずとなってしまったというのだ。
ガウロウの目撃はその後も報告され、1935年、J・E・ローズ氏という人物が洞窟から奇妙な音がすることに気付き、およそ60メートルもの岩棚をロープを伝って降り、その先にあった狭い穴からロープを結び付けた鉄の棒を降ろしていったところ大きな咆哮が聞こえ、急いでロープを引き揚げると鉄の棒はねじ曲がっていたのだという。
さらに、民間伝承収集家のバンス・ランドルフ氏が採集した話によると、1880年代にあるショービジネスマンがガウロウのうわさを耳にし、大量の乾燥リンゴを食べさせて巣穴に戻らせなくして捕獲に成功したのだという。
彼は、ガウロウを見せ物として一般公開するための大きなテントを張り、怪物を一目見ようと大衆が押し寄せた。いよいよその怪物が披露されようとしていたその時、数発の銃声が鳴り響いたかと思うと、負傷したビジネスマンがよろめきながら「ガウロウが脱走した! 逃げてください!」と叫び、群衆は皆パニックに陥ったのだという。
近代において、これほどに逸話が残されている怪物も珍しい。移送中に行方不明となってしまう点は、カナダのバンクーバー島沖に生息するというUMA「キャディ」のエピソードにも似ている。
しかし、討伐隊を結成したミラー氏が撮影したと主張するガウロウの写真が世に出ていない。さらに見せ物として金銭を得ていたショービジネスマンの件については、パニックとなって逃げ出した群衆たちへの払い戻しがなされなかったという話もあり、怪物の話にあやかった詐欺であった可能性すらあるという。
ガウロウの正体については、アーカンソー州にも生息するというアメリカアリゲーター、あるいは新種・未発見の大型トカゲ類ではないかとする説がある。ともすれば、大型のワニを怪物に見立てた伝承であるという可能性も考えられるのだろうか。
ガウロウという名前は、その恐ろしい雄たけびから名付けられたものであるとも言われていることから、洞窟の奥底で鉄の棒をねじ曲げることのできるような何らかの存在がいたという可能性は捨てきれない。













