【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#571】英国では、地下に現れる何らかの存在についての奇怪な話がたびたび聞かれることがある。中でもロンドン地下鉄は、幽霊の目撃例が現在でも多く報告されていることで有名だ。地下という環境は、えたいのしれない何らかの存在がはびこりやすい場所なのかもしれない。そう思えるような出来事が、同じく英国で発生したことがあるのだ。

 2008年2月、南東部のイーストエセックスにあるイーストボーンという町で騒動が巻き起こった。その町の地下にある下水道、そこになんとゾンビのような怪しい存在が潜んでいるというのである。その存在は、「モンスター・イン・スーア」、下水道の怪物と称され、水道の保守・点検を請け負う下水道のメンテナス会社の作業員たちも恐れ、下水道に入ることを拒むほどであったという。

 このいわば「下水道ゾンビ」の目撃あるいは遭遇体験例は、下水道で角を曲がった途端にその下水道ゾンビと遭遇し追跡された、誰もいないはずであるにもかかわらず壁の中から人の話し声が聞こえる、といったように多数報告されていた。

 あまりにおびえる作業員が多かったため、作業員マーク・ウェイは上司の指示を受け、超心理学者のマイケル・キングスコートに調査を依頼し、下水道内の調査が行われた。だが、不審者一人として発見されることは無かったという。このことから、特定箇所の強い磁場の影響、または作業中の眠気や疲労が、そのようなソンビの幻影を生み出してしまったのではないかと一応の説明がなされた。

 ところが、その3年後の2011年、驚くべき動画が撮影されたことで一挙に注目が集まった。その映像は、同国の下水道管理会社が点検のために使用していた無人カメラのものであるとされ、前半のモノクロ映像では画面の左側から長い尻尾のようなものを持った生命体らしき何かが下水道内部を一瞬横切り、さらに後半のカラー映像では再び横切る何者かの姿、そして場面が変わり下水道前方奥の暗闇から目を光らせた存在がカメラの方を2度ほど窺っている様子が映し出されていたのである。

 動画サイトにアップされたわずか1分程度の動画は、まさしく下水道ゾンビを捉えたものであったのだろうか。ただし、この動画のアップロード日が4月1日のエープリルフールであるため、ウワサをもとにして作られたフェイク動画ではないかとの指摘もある。

 下水道にこのような怪物が果たして存在するのだろうか。余談だが、英国では下水道に住む怪物「ハムステッドの黒豚」という都市伝説が存在するという。

 ヴィクトリア朝時代、ある妊娠したメスの豚が誤って下水道に落ちてしまって以来、下水道に流れ込むゴミやネズミを餌に子孫を残していった。子孫は世代を追うごとに凶暴化していき、ペストが流行した頃には投げ込まれた人間の遺体も食べるようになっていった。そうして凶暴な遺伝子を受け継いでいったブタたちはハムステッド川のそばに移り住み、いずれ運河を渡れるほどに強化するかもしれない、というのが粗筋である。

 下水道という環境が、このような人間を恐怖させる怪物のイメージ、もしくは怪物がすみつくような印象を強くしているのかもしれないが、果たして英国にはゾンビとされる怪物が本当に下水道に潜んでいるのだろうか。