【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#567】水中に住むもの、山野や地中に潜むもの、空中を飛行するもの…UMAというのは実に多様なものが存在している。それらの多くは、古代の生物の生き残りであるとか、突然変異あるいはハイブリッドの個体など、実在する生物の延長戦上に類するものとして捉えられている。
しかし、特に神話や伝承で語られるようなものの中には、通常の生物の進化などからは考えられないような実に奇妙で突拍子がない類いのものが見られることも少なくはない。その実に奇妙な例として、「ロケット・キャット」と呼ばれるものをご紹介しよう。
ロケット・キャットは、16世紀にドイツで出版されたとある文献の挿絵に描かれているネコだ。それは、まるで噴射しているジェットパックを背負ったような姿をしており、実に奇妙なデザインから現在ロケット・キャットという通称で呼ばれている。
人工物を身に付けているUMAといえば、ヘルメットをかぶっていたとも言われる「モンキーマン」などが挙げられるが、それにしてもロケットの搭載となると、あまりに異様としか思えない。
一見すると、創作した動物を描いたイラストにすぎないとも思えるが、その正体は、この文献がどういうものであるかを確認することで判明する。実は、この文献は砲兵戦や攻城戦のためのいわば軍事マニュアル本なのである。執筆者は、ドイツの大砲製作技術者で砲術研究家のフランツ・ヘルムだ。
その挿絵の章は「他に手段がなかった場合、城や都市に火をつける方法」と題されており、敵地から捕獲したネコの背中に火薬を詰めた袋を縛り付けた上で発火させ、その後にネコが敵地へ帰るよう放つという、なんとも残酷な解説が記されている。つまり、ネコが背負っているのはロケットではなく爆弾だったのだ。イラストは、ヘルムの記述をもとにして描かれたいわば「画像はイメージです」といったところだろう。
ペンシルベニア大学ミッチ・フラース教授は、データベースからこの文献の翻訳を行ったようだが、「アイデアとしてひどすぎる」「そもそも自軍の野営地が火に覆われてしまう可能性のほうが高い」と困惑を隠せなかったという。
このロケット・キャットの挿絵には、同様に〝ジェット〟を身に付けさせられた鳥の存在も確認できる。さながら「ロケット・バード」とでも呼べるのだろうか。とにかく最後の手段としてのやっつけぶりが如実に表れていると言っていいだろう。兵器に改造された身としてはたまったものではない。
ロケット・キャットが実戦で使用されたか否かについては、記録がないため不明なままとなっている。しかし考えようによっては、本当に実現していたとすれば、また異なった兵器ネコの都市伝説などが誕生していた可能性も十分に考えられる。
UMAの中でも特に怪人系は、実際の事件をモチーフにして形成された例もいくつか見られている。ロケット・キャットも、ひょっとしたらこのようなケースの一つになっていたかもしれないが、どうか実現されなかったことを願いたいものである。












