我が国日本でも古くから未確認生物と呼んでいい存在の記述は残されている。妖怪と未確認生物の違いはさまざまにあり、今までにも散々語ってきたが、「これは創作の可能性がほぼなく、単純に見かけた〝当時では解明できなかった生物〟なのだろう」と思えるものがある。

 今回紹介する「龍魚」は、コイが龍になると言われているもので、大もとは怪物・幻獣の一種として存在した。入れ墨の題材として扱われることで有名だ。水しぶきを上げて描かれる龍のような顔のコイは、鮮やかな色彩で美しいながらも迫力を感じさせる。

 そういった想像上の生物と、現実に見た不思議な生物を重ねあわせてしまうことがある。「麒麟」や「獅子」は架空の動物であったが、キリンやライオンを見た時に当てはめてしまったのだろう。

 龍魚の目撃は明治時代、1873年の3月7日に茨城県でのこと。体に文様の浮き上がった2・4メートルほどの魚が捕獲されたのだ。その様子は当時の新聞に掲載されたのだが、その後もたびたび同様の存在が報道された。

 この写真は新聞ではないが、その龍魚と呼ばれる動物の詳細が描かれている。細かに特徴が描いてあり、もし創作だとしたら、相当な遊び心とそれなりの知識がないと作れないだろう。実際にこのようなものが捕獲された可能性は非常に高い。

 龍魚の正体だが、チョウザメではないかと推測されている。そう、キャビアの卵を産むことで知られている魚である。チョウザメは古代魚のひとつで、3億年も前から今現在まで姿を変えずにいる魚類だ。ちなみに外見が似ているから名前にサメと付いているがサメとは違う仲間である。

 チョウザメは小さいものは2メートルにもならないが、大型のものは5メートル近くにもなるため、目撃情報と食い違わないだろう。

 人は自分の知識内にない生物を見た時に何かしら把握したいと思い、自分なりの理解で概念を形作ろうとする。その結果、想像上の動物を当てはめて安心することもある。昔の日本人にとって、龍魚も同じようなことだったのではないだろうか。