【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#563】まだ開拓が進んでいなかった時代の米国において、説明のつかない事象や不思議な体験といった、現在で言う都市伝説のような話は多く残されている。中でも、そのような話で語られる妖怪あるいは謎の生物といった奇妙な怪物は「フィアサムクリッター」という総称で呼ばれており、その数は数えきれないほどに多いといわれている。今回紹介する「カクタスキャット」もそうしたフィアサムクリッターの一つだ。

 カクタスキャットは、主に米南西部の砂漠地帯に生息しているとされる生物で、カリフォルニア州、ネバダ州、ニューメキシコ州、コロラド州でも数件目撃されているという。

「サボテンネコ」とでもいうこの生物は、その名の由来ともなっているであろうトゲに覆われた毛皮をしているのが最大の特徴だ。体長は1メートルほどで、枝分かれしている尻尾に、前脚には鋭く突き出た爪を持っているという。

 日中は、高い気温から逃れるために巨大なサボテンをツメで切り裂いて身を隠し、夜になるとサボテンにつく昆虫や樹液を飲みに姿を現す。その際、真っ暗な砂漠の中で、まるで骨がこすり合うような乾いた音が聞こえてくるのだそうだ。

 また、発酵したサボテンの樹液を飲むと、酩酊状態となってふらふらと歩き回るようになり、まるで呪文のようにも聞こえる奇妙な鳴き声を明け方まで発するといわれている。縄張り意識が強いためか、ごくたまに通りがかりの旅行者などを襲うこともあると言われ、そのトゲだらけの尾でむち打たれたような傷を負ったという被害もあったそうだ。

 19世紀のカウボーイや開拓者たちの間で語られていた、いわば神話的な生物であるカクタスキャットであるが、そもそもフィアサムクリッターは、未開拓の地域において見慣れない動物を入植者たちが想像で怪物化させたものが多いといわれている。

 カクタスキャットは、砂漠に生息し、夜行性で、小動物の他に昆虫も食べる、体長やそのシルエットなどといった特徴の多くが、ネコ科の中型獣であるボブキャットと共通しているのだ。一説には、ボブキャットからイメージを膨らませて怪物を創り上げたというより、ボブキャットそのものをカクタスキャットと認識したのではないかとも考えられている。

 そこからさらに、ピューマの鳴き声やヤマアラシのトゲなど多くの動物の特徴がイメージの中でボブキャットとハイブリッドされていき、その結果が現在も伝承として語られるカクタスキャット像として形成されたのではないかとみられる。

 現代では、米国のテレビアニメ「ザ・シークレット・サタデーズ」作中に登場した他、トレーディングカード、ソーシャルゲームなどでキャラクターとして描かれる機会が多いようだ。サボテン姿のネコという分かりやすいビジュアルが受けるのであろうか。今後カクタスキャットはおなじみのUMAあるいは妖怪として知名度を拡大していくかもしれない。注目していきたい存在である。