大ベストセラー「新宿鮫」シリーズで知られる作家・大沢在昌氏(68)が今年デビュー45周年を迎える。4月1日からスタートする新連載「柩(ひつぎ)の狩人」(毎週月~木曜掲載)を前にこのほどインタビューに応じた。累計240万部を突破する狩人シリーズをはじめ、数々のヒット作を世に送り出したベストセラー作家は、ますます意気軒高のようで――。

 ――新連載の内容を言える範囲で

 大沢 中華料理店が入っている新宿歌舞伎町のビルで、ある晩崩落事故が起きる。10人の死者が出たが、男女1人ずつ身元がわからない。中には主人公のマル暴刑事・佐江の機動捜査隊時代の後輩もいた。なぜこの3人が同じ店に居合わせたのか…というところから物語が始まります。

 ――普段、プロットを考えずに書き進めるが

 大沢 今回もそう。決まっていたのは事故で10人が死んで、身元のわからない遺体が出てきたということだけ。それがどんな人物でなぜそこにいたのかは書き進めている今も決まっていない。なのに、次から次に怪しいやつが出てくる。

 ――あらかじめ決めないのはなぜ

 大沢 物語にふくらみがなくなるじゃん。別の枝道に行けばもっと面白くなるのに、青写真があると行けなくなってしまう。それはもったいないよ。書いているこっちも「どうなっちゃうの?」とハラハラした方が書きたい気持ちが持続するし。

 ――伏線が回収されない恐れも…

 大沢 いつかそういう日が来るかもね(笑い)。
 ――今年はデビュー45周年。体の衰えは

 大沢 あんまり感じてないなあ。生活スタイルがずっと一緒だから。

 ――どんなスタイル

 大沢 午前7時に起きて新聞読んだりして朝食は取らずに9時から11時まで仕事。それから朝昼兼用の食事を取って、あとは自由時間。車を運転したり、ゴルフ行ったり、飲みに行ったり。もうずっとこういう暮らし。

 ――実働2時間!?
 大沢「もっと書けよ」と言われるけどさ。8年前は朝ごはんを食べてたばこを吸ってたんだけど、禁煙したら、朝ご飯を食べなくなったの。そしたら仕事開始が早まったというわけ。

 ――よく禁煙できた
 大沢 1日40~50本を何十年も吸っていたよ。そしたら咳が出るようになって。みんなから「がんだ、がんだ」と言われて調べてもらったらがんではなかったんだけど、もうやめようと。すぐやめられたよ。

 ――吸いたくなる時もあるのでは

 大沢 クラブに飲みに行って、女の子がかわいくない、話もおもしろくない、イラつくなあと思った時は吸いたくなりますね(笑い)。

 ――45年間続けられた秘けつとは

 大沢 刺激かな。ゴルフ行ったり、飲みに行ったり、あちこち車で遊びに行ったりするのは楽しい。コロナの2年間は6万キロ走ったよ。楽しむためには働いて稼がなきゃならない。だから、年を取っている実感がないんだろうね。

 ――物語を設定しないのも刺激の一つ

 大沢 そういうこと。危ない綱渡りだけどね。

 ――新しいことにも挑戦している

 大沢 アマゾンがオーディブル(ナレーターによる朗読)に力を入れていて、オレもやることになった。

 ――なぜオーディブル

 大沢 漫画は絶対できないし、そこで読者を増やしたら面白そうじゃん。

 ――ちなみに東スポは餃子に挑戦した

 大沢 あれはうまいよ! 別荘で関係者と一緒に食べたんだけど、あんだけニンニク効いているオヤジ一直線な餃子はないね(笑い)。

 ――いつまで続ける

 大沢 80歳になったら飲みに行きたいと思わないかもね。とにかく気持ちが衰えたらダメになる。そのためには、世の中にかかわっていることが大事だと思うよ。

 (インタビュー・土橋裕樹)

 ☆おおさわ・ありまさ 1956年3月8日生まれ。愛知県出身。慶応大学法学部中退。幼いころから大量の読書に親しむ。79年「感傷の街角」で小説推理新人賞を受賞してデビュー。91年「新宿鮫」で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門を受賞。同作は大ベストセラーになる。94年には「無間人形 新宿鮫4」で直木賞を受賞した。新宿鮫のほかにもヒット作多数。2005~09年日本推理作家協会理事長。今でも精力的に作品を発表し続けているほか、釣りやゴルフ、テレビゲームなど多趣味でも知られる。父は中日新聞記者。

【「狩人シリーズ」とは】闇社会を知り尽くす新宿署のアウトロー刑事・佐江を主軸に「警察」「暴力団」など、それぞれの論理と威信がぶつかり合う物語。登場人物の強烈なキャラクターとスリリングな展開で人気を集め、シリーズ累計240万部を突破。これまで「北の狩人」(96年)、「砂の狩人」(02年)、「黒の狩人」(08年)、「雨の狩人」(14年)、「冬の狩人」(20年)が幻冬舎から刊行されている。