鬼門の2月を攻略せよ――。節分にバレンタインデー、猫の日とイベントが盛りだくさんだった2月もあとわずか。“苦しい2月”を乗り越えるべくコンビニ業界が踏み出した新たな一歩を流通ウォッチャーの渡辺広明氏が徹底分析した。
2月と8月に小売業の売り上げが落ち込むという“二八(にっぱち)”という定説をご存じだろうか?
「2月に売り上げが落ちるのはそもそも日数が少ないということがまずひとつ。それから新商品が出回るのが3月、9月に集中し季節の変わり目であるというのが2つ目の要因です。しかし、コンビニだけで見ると8月は最も売り上げが伸びる時期なので実は二八は当てはまりません」(渡辺氏)
日本フランチャイズチェーン協会のコンビニエンスストア統計調査を見れば一目瞭然。渡辺氏の言うように、夏の暑い季節には飲料やアイスがよく売れ、ついで買いを促すので年間でも高い売り上げを記録している。
つまり2月こそ小売業にとって真なる鬼門。販売機会をつくるためにあの手この手でイベントが生み出されてきた。その筆頭がバレンタインデーだ。
「1990年代、僕がローソンの店長をしていたときにはバレンタインはまさにドル箱でした。当時はまだ義理チョコが文化だったので、『あれ、1個足りないかも…』と思った女性が慌てて買いに来るのです。もちろん本命チョコではありませんよ(笑い)。だいたい13日の午後から売れ始め、安いものから売れていく。14日には割と高価格なものが残るんだけど、渡さないといけないから最終的にはすべて売れる」
だが2000年代になると“義理チョコ離れ”が進み、本命チョコを渡す人もグラデーションのように減り始めた。令和になった今では友チョコや自分へのご褒美チョコが主流だ。男性はもうチョコをもらえなくても恥じ入ることもない。
「14日が特別な意味を持たなくなった気がしますね。2月のどこかでおいしいチョコを食べられればいいといった感じです。最近では百貨店のバレンタイン催事が盛況になっています。今ココでしか食べられない高価格なショコラが人気で、これから先はインバウンドでも注目を浴びると見ています」
恵方巻きも同じような構図にある。その起源は諸説あるものの、2000年代に入ってスーパーを中心に広がる。そこでコンビニ各社が恵方巻きに注力したことで、全国区のイベントとなったことは間違いない。
「恵方巻きの市場は右肩上がりで、今では300億円を超えるとも言われています。ところがコンビニにとってはもうそれほどうまみがあるものではなくなっています。2019年に食品ロス削減推進法が施行されて以来、コンビニは廃棄を気にして予約販売を前提とせざるを得なくなった。加えて黒毛和牛を使った恵方巻きなど高級化路線もコンビニにとっては逆風。こちらも主役は百貨店などになりつつある」
だからといって百戦錬磨のコンビニが手をこまねいているわけではない。
ローソンは今月、価格据え置きで重量約47%増量の商品を19品発売。“盛りすぎ商品”としてSNSでバズり「見つけたけど買えない」と悲鳴が上がるほど盛り上がりを見せた。
「期間限定の増量企画はコンビニの定番でしたが、40%を超える極端な増量はファミマが創立40周年を迎えた21年に実施しています。値段がそのままということは当然利益率が下がっているわけで、実質的にはデフレ経済を後押ししてしまわないかだけが気がかりです」
ファミリーマートは昨年から2月22日の「猫の日」に着目。「X」(旧ツイッター)のモーメントカレンダーによれば昨年の猫の日関連ワードのツイート数は904万件で、これはバレンタインの50%に匹敵する。
今年は「ファミリ~にゃ~ト大作戦!」を2月13~29日に実施し、昨年の約2倍となる全19ラインアップを用意した。
「僕は犬派なので『猫の日』と言われてもピンとこないのですが…、猫の飼育頭数は犬よりも多い約900万匹なので面白い取り組みだとは思います。今後の成長のカギは他の追随があるかどうか。セブンやローソンも猫の日イベントに乗るようになればそれこそ一大イベントになるのではないでしょうか」
愛犬さくらを抱く渡辺氏はほほ笑みながらそう語った。

















