大相撲の新たな一年が初場所(14日初日、東京・両国国技館)で幕を開ける。昨年は2人の新大関が誕生した。土俵の世代交代を印象づける一方で、まだ関脇以下には看板力士の予備軍が続々と控えている。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、今年の大関候補を指名。大相撲の新時代を担う3力士に注目した。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 大相撲の新しい一年が、いよいよ始まります。昨年は霧島と豊昇龍が大関に上がりました。今年も新しい看板力士が誕生しそうな予感がする。その中で最も大関に近い位置にいるのが、私の弟弟子でもある関脇の琴ノ若です。昨年は新三役だった初場所から、一年間を通じて負け越しがありませんでした。地力や安定感では、全力士の中でも3本の指に入ると思う。

 琴ノ若は穏やかそうに見えて、実際は誰よりも負けん気が強い。一つ例を挙げれば、本場所で負けると必ず部屋に帰ってから土俵で四股を踏んでいる。これは私が現役時代に続けていた習慣で、しっかり私の背中を見て育ったところがあるんですね(笑い)。私もそうでしたが、立ち合いで相手の変化で負けたり、相手を研究しすぎて負けたりすると、悶々とする。

 そこで四股を踏むことで心が静まり、次の日の相撲に向かっていくことができるんですよ。負けてヘラヘラするのではなく、自分の悔しい気持ちと向き合うことが強さにつながる。その姿勢が、琴ノ若の今につながっていると思います。初場所の成績次第では大関昇進の可能性がある。ここはぜひ、チャンスをつかんでもらいたいですね。

 昨年の後半に活躍した熱海富士も大関候補に入ってくるとみています。まだ粗削りな部分があるけれど、スケールの大きさを感じさせる。まわしにこだわらずに前に出られるのも魅力。2場所続けて優勝争いに加わったことは、地力がある証拠です。初場所は西前頭筆頭で新三役も目前。上位の壁にぶつかる番付で、もうひと皮むける姿が見てみたいですね。

 それから、少し気が早いかもしれませんが、個人的には新入幕の大の里に注目しています。体の厚みや背中の大きさは、三役力士と比べても見劣りしない。それでいて、相撲に器用さもある。これまで幕下と十両では優勝に手が届きませんでした。鳴り物入りで入門した力士は「負けられない」という意識が強すぎて、下の番付では力を発揮できないことがある。

 そういうタイプの力士は、番付が上がれば上がるほど取りやすく感じるはず。上位で当たる相手は全員が格上の力士。余計なことを考えずに向かっていくことができるし、下の番付では見えづらかった自分の本当の実力や課題を肌で感じることができる。どこまで伸びるか楽しみだし、もしかすると、今年の後半には大関が手に届く位置にいるかもしれません。

 若手力士たちの下からの突き上げが激しくなっていけば、どんどん土俵も活性化していくはずです。今年も、大相撲の新たな「顔」が出てくることに期待したいですね。それではまた!