【Buzzの本懐】ニッチな内容とマスコットの〝本音〟で人気を集めるユーチューブチャンネル「有隣堂しか知らない世界」へのインタビュー。後編ではユーチューブチャンネルが書店に与えた効果に加えて、制作チームが思い描く〝これから〟についても赤裸々に語ってもらった。
――ブッコロー(ミミズクのマスコット)さんも言及されたように、10分以内の動画が多い印象を受けます
ハヤシユタカ氏(動画プロデューサー=以下ハヤシ)そうですね…。僕の中では「短いは正義」という意識があります。1時間以上の撮影を、普通に編集しちゃうと20~30分にはなっちゃうので、そこを10分の動画にすることが〝ミッション〟だと思っていますね。今の世の中、24時間隙間なく動く人が多い中で、10分をいただくこと自体大変なんですよ。ですから、視聴者を確保するためには動画を短くしないといけない。僕もブッコローさんの話を面白くないと思っているわけではなくて、苦渋の決断でデリートボタンを押しています。
――コンテンツの長さも時代に合わせているということですね。
ハヤシ「もう終わっちゃったの?」と思ってもらえるような動画作りは意識しています。次の動画も見てもらいたいし、全部の会話で丁寧にボケとツッコミを入れるということはないですね。見ている視聴者の方がツッコんでくれたらそれでいいかな、と。
R.B.ブッコロー氏(以下ブッコロー)僕もそこは気付いてますね。「トゥトゥトゥトゥットゥッ…」(場面転換用の効果音)が流れた時に、ここは〝普通じゃない〟編集をしているな、とか。
ハヤシ とにかく次の展開に切り替えていくことは大事にしています。
――話題は変わりますが、これだけのチャンネルの人気は業績に影響しているのですか?
渡邉郁氏(有隣堂=以下渡邉)全体の売り上げと比較すれば大きな収益はありませんが、グッズのような今までにない収益を作れたのではないかなと思いますね。それにお店に行列ができるということがそもそも今の書店にはなくて、『鬼滅の刃』が流行した時くらいだったので…。
ハヤシ やっぱり広報目的のチャンネルなので、実際の売り上げにどれだけ反映されているのかは分かりづらい部分はあります。結局書店って本を定価で販売しているので、お客さんからしてみればどこの書店で買ってもあまり変わりがないですからね…。ただその中で「どうせ買うならユーチューブが面白かった有隣堂で買おう」となってくれたらいいなと。どれだけそういった効果があるかは分からないけれど、あると信じているし、これからもあってほしいなと思っています。
――見えない効果がある、と
ハヤシ 一方で数字が見えるようにしているところもあって。例えばブッコローをデザインしたボールペンは、1時間で1500本が完売したんですけど、それを見た従業員が1人でも「うちでこんなに売れるんだ」と自信を持ってもらえたらいいわけで。どんな動画や事業も、成功体験につなげるということは意識していますね。
――反対にチャンネルの効果が波及していない部分はあるのですか?
渡邉 そうですね…。前提として、まだ来店される方の10人に1人もチャンネルをご存じでないんですよ。一昨年に店頭でアンケート調査を行った時は、チャンネルの知名度が全体の3・5%で…。当時と比べれば登録者数は2・5倍に増えていますけれど、単純計算しても10%に届くかどうかで。そこは課題ですし、まだまだ伸びしろがあるなと思っています。
――社員から見てまだ伝わっていない魅力もあるのでは?
渡邉 有隣堂には動画に出演できる社員というか、商品への愛や知識が深い人はまだまだいますが、あまり紹介はできていないですね。出演者もかなり固定化されていますけど、「実は他にもいるんだよ」ということはお伝えしたいです。
――先ほど「出演したい方がいない」という話もありましたが…
渡邉 最近は「岡﨑や間仁田(間仁田亮治氏、多数の動画に出演する文房具バイヤー)のような面白いことは言えないから」と断られることも多いですね。ハヤシさんとブッコローもフォローしますとは伝えてはいるのですが…。
ハヤシ こちらとしても何とかするので、ぜひいろんな社員に出演していただきたいなとは思いますね。社外のゲストも増えてますけど、やっぱり社内の人を発掘したい気持ちは強いです。ただどうしても書店員はシャイな方が多くて…。
渡邉 毎日本に向き合っていたいという人ばかりなので…。だからこそ面白いのかもしれませんけど。
ブッコロー そういう意味では書店に就職した方々が、ある日社長に「ユーチューブをやろう」と言われただけでここまでやれているのはすごいと思うんですよ。けれど一方でクリエイティブな環境に身を置いてきたPからしてみれば、もう少し踏み込んできてほしいということも分かる。そしてなぜかその両者の〝中和〟を「出役」の僕がやっているというね…。普通いばっていてもおかしくないMCが一番気を使っている、「ゆうせか」(チャンネルの略称)はそんなチャンネルだ…!〈ブッコロー氏、翼を前に突き出す〉
――力説ありがとうございます…! では最後にファンの方に向けたメッセージや、今後の意気込みも教えてください
渡邉 ファンの皆さんには感謝しかないですね…。本当にこれからも一緒にやっていきましょうという気持ちです。今後ということでは、まだショート動画に着手できていないので、我々なりに取り組んでみようという話はしています。そちらに関してもご期待いただければと思います。
ハヤシ 僕も感謝といいますか、1日のうちの貴重な10分を割いていただいてありがとうございますと伝えたいですね。今後としては、〝某最大手自動車メーカー〟のオウンドメディアを登録者数で抜きたいなと思ってます。やっぱり日本一の企業を抜きたいし、チャンネルを任せてくれた社長に何か1つ「日本一」の称号を渡したいというか…。社員の皆さんにとっても、「皆さんご存じの大企業を登録者数で追い抜きました」というのは絶対自信につながるでしょうし。
ブッコロー 他の中小企業にもきっと勇気を与えるよね。
ハヤシ 本業の売り上げは比べ物にならなかったとしても、「ローカル書店がグローバル企業を超えられるんだ」と言えたら最高ですよね。
――最後にブッコローさんも目標があればぜひ…
ブッコロー 今後ですよね、今後…。Pとはちょっと方向性が違うんですけど、「そんなことになっちゃったんだ」みたいなことをやりたいですよね。武道館でライブしたりとか…
〈一同爆笑〉
ブッコロー でも武道館に立てるとなったら立ちたいでしょ?
ハヤシ 立ちたくない。
渡邉 立ちたくないです。
ブッコロー それはさぁ、ただ恥ずかしがってるだけだから…。
ハヤシ いや全然…。
渡邉 本心から立ちたくないです。
ブッコロー 2人ともどうしちゃったのよ…。僕は〝全部やりたい〟タイプだし、いまだにオリンピック見てると、今からでも金メダル取れる競技はないかなって考えるけど…
――これまでできなかったことを成功させたい、ということでしょうか
ブッコロー そうですね、これまでも「ブッコロー」が連れてきてくれたという感覚はありますし、この役を引き受けたからには今まで見たことのない景色を見たい、とは思いますね。じゃあどうやってMCとして努力するのかと聞かれると難しいですけど(笑い)。今後も面白い生き方ができるように、僕なりに頑張っていくつもりですよ。
【有隣堂しか知らない世界】神奈川県を中心に展開する老舗書店チェーン・有隣堂が開設したユーチューブチャンネル。様々なジャンルに精通した社員やゲストと、ミミズクのマスコット・ブッコローの軽妙なやりとりが人気を呼び、チャンネル登録者数は26万人を突破している。













