あらゆる世代がスマホで漫画を気軽に楽しんでいる昨今、若い世代にも評価される、〝漫画の話ができる大人〟を目指したい…。そんな大人世代のためにオススメの漫画を紹介する企画の第2弾。今回はKADOKAWAの「読んでいると一目置かれる漫画」5作品の魅力を、それぞれの担当編集者に語ってもらった。
どれも読み込みやすい巻数で、年末年始のお供にも持ってこいの作品ばかり。「噂では聞いているけど、どんなところが面白いのだろう」という漫画好きの方も必見だし、編集者ならでの〝推しポイント〟にも注目!
【少女漫画と劇画がひとつに!】『キラキラとギラギラ』(著・嵐田佐和子/既刊2巻)
少女漫画の主人公のようなビジュアルの女の子・ルルが転校した先が、劇画調の学校だったというギャグ作品です。世界観のギャップから生まれる笑いを作品の中心に置きつつも、ストーリーは〝幼馴染同士の恋愛〟という、王道ものになっています。画風は70、80年代の作品を踏襲していますが、読者は若い世代の方も多いです。とはいえ大人世代にとっても〝懐かしの画風の漫画〟として楽しんでいただけるのではないでしょうか。
作品の魅力はやはり絵のインパクトです。普通の学校生活が描かれているのに、劇画と少女漫画が同じ画面にあるだけでなぜか面白いという…。ルルのツッコミも本作の魅力です。育ちの良いルルが、劇画の世界で見たことをそのまま口にしているだけなのですが、なぜか笑えるフレーズになる場面が多くて。この点は実際に連載をスタートさせてから気付いた面白さです。
作者の嵐田さんは、元々少女漫画にも劇画調のバトル漫画にも造詣が深い方です。であればどちらも取り入れてみようという読み切り向けのアイデアから生まれた作品です。嵐田さんは漫画家としてとても器用なタイプなのですが、ペンを持ち変えながら2つの画風を同時に描き進めていると知った時は驚きました。
今後は、〝劇画という異世界〟でのルルの成長にも注目していただきたいですし、ぜひ劇画調の同級生たちにも目を向けていただければと思います。見た目は濃いけれど真っすぐでいいキャラクターばかりなので、段々と好きになってしまうと思いますよ。(担当編集者・談)
【大人にも刺さる主人公の姿と繊細で丁寧な感情表現】『ミューズの真髄』(著文野紋/全3巻)
美大受験を一度は諦めた主人公・美優が、ふとした出会いから自分を見つめ直し、人生をリスタートさせようとする姿を描く作品です。
当初は主人公と同年代の20~30代の女性に向けて作っていたのですが、今は20代後半~30代の男性からの人気も集めている印象です。加えて美大受験を控えている方、美術・デザイン系の職業に就きたいと考えている方からの反応もいただいています。
魅力の1つは文野さんにしか描けない感情の表現です。主人公が一気に思いを吐露するシーンや、心のバランスが傾いてしまっているシーンも、とても繊細に丁寧に表現されています。そして見開きページや背景の描き込みもポイントです。例えば賞状がキッチンに飾られている美優の実家には、わずかな〝いびつさ〟が表されていますし、舞台の作り込みには注目していただきたいです。
やはり大なり小なり夢を諦めるという経験はどんな方にもあると思いますので、その意味では大人に刺さる作品になっていると思います。我々としてもきれいごとにはしないと決めて作った作品なので、「しんどすぎて読めない」という声もいただきますが、それでも立ち向かう主人公の姿が支持されたのではないかと感じています。
既に完結していて、読み切りやすい巻数でもあります。SNS等で冒頭は読んだことがあるという方にも、ぜひ読み進めていただきたいですね。(担当編集者・談)
【分かり合えなくてもいいという着地点】『いやはや熱海くん』(著・田沼朝/既刊2巻)
きれいな顔で異性にモテるものの、恋愛対象は同性という主人公・熱海くんの、ちょっとうまくいかない恋愛や日常を描いた作品です。主な読者は20~30代の女性ですが、幅広い年齢層の方から支持をいただいています。
一見すると恋愛中心の作品ですが、心の機微をしっかりと描いているところも読んでいて楽しいポイントではないかなと感じます。キャラクター1人1人にリアルな〝手触り〟がありますので、「自分の周りにもこういう人がいるな…」とか、「意識していなかったけれど自分もこうだな…」とか、そういった発見も楽しめる作品になっています。
全体的にやさしさや気遣いに満ちている物語ですから、大人世代が読まれても、癒やされたり和んだりできるのではないかなと思いますね。現実社会では価値観が違う人とぶつかることも多々ありますが、作中ではキャラクター同士が「分かり合えなくてもいい」という着地点を見出しているんです。そして著者の田沼さんは、その考え方すら個人の自由であるというような軽やかな描き方をしています。そんな「押し付けない」作風にも安らぎを感じていただけるのではと思っています。
実は作中の「関西弁」がファンから評価されているということも紹介させていただきたいです。田沼さんが大阪出身ということもあり、関西の読者の方からも「自然」「音声として聞こえる」という声をいただいていますので、ほんの少しでも意識して読んでいただけたらうれしいです。(担当編集者・談)
【TikTokでも話題!読めば青春を思い出す】『スタジオカバナ』(著・馬あぐり/既刊5巻)
真面目な女子高生・ゆかりと、学校生活よりバンド活動を優先する美少年・優助との淡い恋愛を描く、王道ラブストーリーです。しかしその一方で10代の若者が抱える悩みや内面の未熟さ、辛い恋愛といった部分が丁寧に描かれている作品でもあります。ヒーローの優助もつらい恋愛に振り回されていて、一生懸命に生きる姿が、同年代の読者の共感を呼んでいるのかなと思っています。
読者の約6割は10代の女性ですが、大人世代にも「学生の頃にはこんな恋愛をしていたな…」と振り返っていただける内容ではないかなと思います。また題名の通り、音楽スタジオが舞台の1つでして、そこに出入りする大人たちの存在、そしてライブシーンの描写も魅力の1つです。お子様が読んでいたものを手に取ったら、親御様までハマってしまったという話もよく聞きますので、気軽に読んでいただきたいですね。
ちなみにTikTokでは、優助の顔の部分を「出会ってしまった」という文章とともに一般の読者様が紹介してくださった投稿が話題になりまして。そこから作品を知った方が、今度は物語にマッチした切ない音楽に合わせて紹介動画を投稿して…、という流れで知名度を高めたという経緯があります。
その一方でヒロインのゆかりの健気さ、応援したくなる雰囲気が好きという感想も多くいただいていますね。これからの2人、そして「スタジオカバナ」を行き交う人々の人生を丸ごと楽しんでいただければと思います。(担当編集者・談)
【身近な人が別の何かにすり替わっていたら…】『光の死んだ夏』(著・モクモクれん/既刊4巻)
人口の少ない集落で暮らす少年よしきが、〝人ならざるもの〟として戻ってきた幼馴染「光」と過ごす夏を描く物語となっています。『このマンガがすごい! 2023』(宝島社)でオトコ編第1位にランクインしたこともあり、幅広い方に読んでいただいています。
大きな魅力の1つは、光になり替わった存在、「ヒカル」ですね。先生も「人ではない」ということを意識されているため、根底の価値観や常識が我々とは大きく違っています。しかしよしきは敵対することなく、何とか一緒に暮らしていく方法を探していまして…。バトル漫画でもなく、人間にしようとする訳でもないという、〝人ならざるもの〟との独特な向き合い方には注目してほしいです。そして強調された擬音や、高い画力を用いた〝夏〟の世界観もこの作品ならではの魅力です。冬に読んでいても、一気に夏の気分にさせられてしまう程の場面構成になっています。
どの世代の方にとっても「身近な人が別の何かにすり替わっていたらどうするか」という問いは非常に重いはずで…。その問いに少年たちが一生懸命答えようとする姿や、一つ一つの選択自体の重さを感じながら読んでいただきたいですね。今は「ヒカル」の正体に迫ろうとする〝第二部〟に突入していますので、1話だけ見たことがあるという方にも、どうか今後の展開をチェックしていただければと思います。(担当編集者・談)






















