【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#545】ヘビにまつわる伝承や神話は世界各地に点在している。日本においても、ヤマタノオロチをはじめとして、多くの大蛇にまつわる伝説が各地に残されているのはご存じだろう。だが、そのような驚くほどに巨大なヘビが実在しているとしたら、そしてそのヘビによって実際に被害が出ているとしたら、これほど恐ろしいものはない。

「ヤクママ」は、ペルーのアマゾン川流域に生息するといわれる大ヘビである。ヤクママという名前は現地で「水の母」あるいは「川の支配者」を意味しており、体色は緑で、体長は50~60メートルにも及ぶという。世界最大のヘビとされるアミメニシキヘビは最大10メートルにもなり、これだけでも驚異的な記録であるが、それに比してヤクママが桁違いの巨大さであることが分かる。

 地元の伝説では、100歩以内を通るすべての生き物を飲み込むほどの能力を持っているといわれ、川に入る前に角笛を吹くと、(その地域にヤクママが滞在していれば)姿を現すと信じられてきた。

 ヤクママの姿が写真や映像に収められたことはこれまで一度もないが、現地の人々によって数多くの目撃や被害が報告されており、ヤクママによって命を落とした人間も少なくないという。川へ漁に出たボートが、誰も乗っていない状態で帰ってくるということもあった。多くの人々がヤクママに丸のみにされてきたというのである。

 1900年代、ある村に住む2人の男がヤクママを退治しようと、爆弾を持ちボートへ乗り込んだ。川に投げ入れた爆弾によって大きな爆発が起こった後、ヤクママは血まみれになったが死体として浮いてくることはなく、そのままどこかへ逃げていってしまった。それ以後その村にヤクママが現れることはなかったという。

 ヤクママの正体は果たしてなんであろうか。先述したアミメニシキヘビはアジアにしか生息していない。そこで一つの候補としてあげられるのがアナコンダである。体重100キロ級にもなるアナコンダはペルーにも生息しており、そして水中移動も可能である。だが、やはり体長はヤクママの大きさに遠く及ばない。別の証言によれば、ヤクママは頭を持ち上げていたというが、アナコンダにはこのような習性がない。

 そんな中で、ヤクママの正体は絶滅したとされる「ティタノボア」の生き残りではないかという説がある。ティタノボアとは、かつて存在していた世界最大のヘビであり、コロンビアの炭坑で発見された化石によると、時代は恐竜絶滅後の5800年前のもの、体長は13メートル近く、重さも1トンを超えるほどであるという。生息地は赤道付近の熱帯で、アナコンダの遠い祖先であると考えられているが、これよりも大きな個体が生息していた可能性も十分に考えられるだろう。

 1906年、イギリスの探検家パーシー・フォーセットが南米で19メートル近い「巨大なアナコンダ」と遭遇し、発砲して傷を負わせたという報告がなされている。この記録が事実であれば、現在で最長を記録しているアミメニシキヘビやアナコンダの数値の倍以上となるが、ヘビの長さは目測で見誤る可能性が非常に高く、恐怖感による心理的な錯覚や誇張がなされる可能性は否めない。

 ヤクママの全長についてもそのような疑念は当然ある。しかし、われわれがまだ知らない想像以上に巨大なヘビが実在しているという可能性は、そのすべてを否定できるわけではない。