日本の格闘技界がドーピング問題に揺れている。格闘技イベント「RIZIN」は、6月24日の札幌大会に出場した木村〝フィリップ〟ミノル(29=ブラジル)のドーピング検査が陽性だったことを2日に公表し、大きな波紋を呼んだ。業界全体のドーピング汚染の現状はどうなっているのか。今後、格闘家はドーピング行為とどう向き合うべきなのか? 〝バカサバイバー〟こと青木真也(40)が忖度なしにメスを入れる――。

 会見でRIZINの榊原信行CEO(59)は、6月のロクク・ダリ(コンゴ)戦後の木村のドーピング検査結果を「陽性」と発表。筋肉増強剤に該当する成分が複数確認されたとして「当該試合は無効試合とする」「契約書に基づき、罰金処分とする」「RIZINにおいては半年間の出場停止処分とする」「復帰の際にはドーピング検査を実施し、陰性が証明された場合のみ出場が可能となる」こととなった。

 RIZINではこれまでもタイトル戦出場選手などに検査を行っていたが、結果は発表していない。今回初めて公表した理由について榊原CEOは「RIZINに出る前から(木村が)疑われていたからです。そのまま出てもらうのは無理で、検査をしてもいいか聞いたところ『大丈夫です』というから出場になった」と説明。検査結果を公表することは、当初から木村サイドと合意していたという。

 今回のドーピング騒動について、新幹線の車内から電話取材に応じた青木は、「そもそもドーピングチェックをやるなら全員にやらないとダメじゃないか? 『ファンに疑われているから木村だけ検査する』って、客に流されすぎだ。公平じゃない。対戦相手のダリも検査しないでノーコンテストはおかしいと思う」と声をしゃがれさせる。

 さらに「もう一つ言えるのは、事前に『検査する』って言われて検査してるのに、うっかり陽性が出ちゃうヤツも出ちゃうヤツだ。その上、全然悪びれてないのが面白かった」と指摘する。

 特に木村が会見で「検査された時は体に残っていて、僕自身反省しています」「(薬物を)抜いている期間も考えて陰性だと思っていた」などと話したことに関して、青木は「結局、あの会見では木村が反省してないってことが明るみに出ただけだったよね。大体、自分で薬を『抜いた』って言っちゃダメだろ。そもそも摂取すること自体が禁止されているんだから」と斬り捨てた。

 しかも木村の一件は、格闘技界のドーピング汚染をめぐる氷山の一角だという。「ほかにも? いるでしょ。〝普通のもの〟だよ。『ああ、こういうヤツっているよね』って感覚。だから俺は木村を糾弾する気にならない。ファンはもっとクリーンだと思ってるかもしれないけど、木村みたいに『陽性が出なければドーピングしてもいい』っていうのは実際にいるからさ」と明かす。

 この現状を前提にドーピング行為を「ただの泥棒行為だ。みんなで積み重ねたイメージやお金をズルして奪ってるだけ。泥棒って、いなくならないでしょ? それと同じだから、いくら検査してもなくならないと思う。モラルの問題だから。結局『お互いのプライドがルール』ってことに尽きるんだよ」と厳しい口調で断罪した。

 青木自身のドーピングに対する向き合い方も聞くと「そもそも格闘技って、そういう(ズルをしたくなるような)弱い自分に勝つためにやるわけじゃん。俺は、競技で勝つことが本当の『強さ』じゃないと思っていてさ。本来の『強さ』とは自分に打ち勝つことと、どんなに苦しくても生きていくことだと思っていて」と力説する。

「もし対戦相手がドーピングしていたら?」の問いには、「関係ないな。俺は相手がどんなヤツでも対角に立ったら勝たないといけないから。それが父親でも子供でも。だから相手がやってようがやってまいが関係ない」と語った。

「もう一度『何のために格闘技をやっているのか』を考えないといけないんじゃない。人生に勝つためなのか、競技で勝つためなのか、金を稼ぐためなのか。俺は豊かになるためにやってるけど」

 珍しくいいことを口にしたかと思えば、最後に「それはそれとして昨日(2日)、矢地(祐介)さんと練習していたんだけど『俺もノーコンテストにしてくれないかな』ってボヤいてたよ。だから矢地は『被害者家族の会』をつくればいいよね! あっ、まだ家族じゃないんだっけ…」。よく分からないことをつぶやくと「あっ、もう新大阪じゃん。俺はこれから成り上がってくるから、このへんで…」と電話を切り取材を強制終了した。