関東大震災が発生してから1日で100年となった。この間、首都・東京は大地震に見舞われていないが、首都直下地震はいつ起きてもおかしくないといわれている。専門家は関東大震災やハワイ・マウイ島で発生したとみられる火災旋風の恐怖を忘れてはいけないと指摘する。

 1923年9月1日の午前11時58分に相模湾北西部を震源とするマグニチュード7・9の地震で関東地方は壊滅した。約10万5000人の死者・行方不明者が出たが、9割近くは火災による犠牲者だった。中でも墨田区では火災旋風といわれる竜巻に巻き込まれ、同区の旧陸軍被服廠跡では約3万8000人が亡くなった。115人が死亡したハワイ・マウイ島での山火事でも強風にあおられ、火災旋風に近い状態が起きたとされる。

 元東京消防庁消防官で一般社団法人「日本民間防衛連合会」の金子富夫代表理事は「東京ではまだ多くの木造住宅密集地域が存在する。数件の火災であれば、旋風は発生しにくいが、数十軒、数百軒の大規模火災に拡大すれば必然的に激しい上昇気流が発生し、結果として大規模火災旋風が発生する」と首都直下地震が発生した際にも火災旋風が起きる危険性を指摘する。

 東京都は首都直下地震等の被害想定を約19万4400棟の建物の全壊、焼失、約6100人の死亡と試算しているが、金子氏は大甘過ぎるとの見立てだ。首都圏では現在、火災が起きても何十台もの消防車が駆け付け、迅速な消火活動で燃え広がることはないが、首都直下地震で同時多発火災となるとそうはいかない。

「東京は消防庁の通常出場体制が完璧なので、都民は助けてくれるとの思い込みがあるが、首都直下地震が発生すれば、火災発生件数は811件を想定していて、消防庁保有の第一線ポンプ車は約500台しかない。消防団ポンプ車両を加えても全くの不足で、対処できない」(同)

 加えて、地震に伴う道路崩壊、陥没、橋の落下、建物倒壊、電線電柱倒壊、看板落下、ビルの大規模ガラス飛散などさまざまな環境破壊が生まれ、消防車両は全く機能を果たせない事態に陥る。東日本大震災時にも都内は交通マヒとなっている。

 災害時には消火や人命救助に当たる消防団も存在する。都内には98の団、約2万2300人の団員がいるが、地方消防団とは活動格差があるという。

「地方消防団は少なからず林野火災、一般火災消火などの実務活動をしているが、都内の消防団は実際の消防活動経験は、ほとんどありません。大規模地震発生時に本来の消防活動ができるのか」と金子氏は疑問を呈す。

 大地震が発生し、火災に見舞われた場合はどう対応すればいいのか。「とにかく逃げるが勝ちですが、マウイ島の状況を見てもらえば分かるように避難行動は大変です。指定避難場所へ避難するしかないが、風向き、火災場所と自分の位置、広域場所、河川、湖沼などを日ごろから意識する自力防災活動が大事です。守られる防災対策から自ら守る防災対策です」と警察、消防頼みになってはいけないとする。

「この東京で大地震が起きれば、全くの未知の被害になる。関東大震災の時の東京の人口は400万人で、今は1400万人。消防庁職員は1万8000人いるが、3部制なので地震発生時に対応できるのは5000人。いかに都民を守ることが無理なのかが分かると思うが、地域住民の救助活動、協力がどこまでできるかが重要。8~9割の命はそこで救われる」と金子氏は力説した。