岸田文雄首相に向かって爆発物を投げたとして威力業務妨害の疑いで逮捕、送検された木村隆二容疑者(24)が現場にナイフを持ち込んでいたことが16日、判明した。危害を加える明確な意図があったようだが動機はまだ明らかになっていない。組織的な背景の有無も不明で、安倍晋三元首相が銃殺された事件で逮捕された山上徹也被告と同じく“ローンウルフ”の可能性もある。
16日、岸田氏は予定通り大分県で参院補選の選挙応援を行った。別府市、佐伯市、大分市の計3か所でマイクを握り支持を訴えた。事件が起きた前日の15日も和歌山から千葉に移動し、候補者の応援。テロには屈しないとのメッセージを発している。
一方、木村容疑者が事件現場となった和歌山市の演説会場にナイフを持ち込んでいたことも判明。また、家宅捜索では粉末状のものや工具が押収されたという。木村容疑者は黙秘をしており動機については話していない。
一国の首相を狙ったテロ行為だけに動機や背景が注目されている。公安関係者は「今のところ木村容疑者に思想的背景や何らかの組織への加入、山上被告のような宗教との関わりなどは明らかになっていない。24歳と若いことがネックになる。仮にどこか団体に所属していたとしても活動歴は短いだろうから追いにくい」と指摘した。
単独で行為に及ぶテロは“ローンウルフ”とか“ローンオフェンダー”などと呼ばれる。安倍氏を銃撃した山上被告もローンウルフ型とされている。このタイプは組織的なつながりがなく、把握しづらい点が問題視されている。
「ローンウルフを事前に見つけるのは難しい。火薬や爆発物になる材料が大量購入された等の情報を得て、調達経路を調べて人物を特定するなど地道な作業が必要になる。また、これは交番の役割になるかもしれませんが、地域住民から『最近姿を見なくなった人がいる』『あそこの家の人がひきこもり始めた』などの話を聞ければ端緒にはなるかもしれない」(同)
もっとも中国のような監視社会であれば事前に取り締まれるかもしれないが、日本社会においては現実的ではない。それでも地道な作業をし続けるしかなさそうだ。
一方で選挙のやり方にも工夫が必要かもしれない。昨年の安倍氏が殺害された事件をきっかけに選挙が変わるとも指摘されていた。当時、選挙戦を仕切っていた関係者は「選挙は変わらざるを得ない。新型コロナウイルスで握手をしなくなるなど政治家と有権者の距離が広がりましたが、事件を受けてもっと離れていくでしょう」と指摘していた。
しかし結局は変わっていない。今も候補者は街頭に立ち、応援弁士の政治家は聴衆と触れ合っている。政界関係者は「安倍氏のことがあったので、選挙戦で政治家を狙うテロが起きる可能性はゼロではないと思っていた。警備のことを考えれば握手などは控えた方がいいが、政治家はどうしてもやりたがってしまう。それは止められない」と選挙のやり方はなかなか変わらないと話した。
5月中旬にはG7広島サミットが開かれる。「日本だけでなく世界からVIPがやってくる。しっかり警備しないといけない」(前出の公安関係者)と緊張感が高まっている。
サミットで何かあれば日本が誇る安全神話の崩壊が世界にさらされることになる。ローンウルフ対策が急務だ。












