世界中で注目を集める対話型AI「チャットGPT」をめぐり、世界中が慌ただしい。日本では開発元の米オープンAI社のサム・アルトマンCEOが10日に首相官邸を訪れて岸田文雄首相と会談。日本への進出を検討していることを表明した一方で、欧米では使用を禁ずる動きも出ている。アルトマンCEOは日本市場重視の姿勢を打ち出して岸田首相もノリ気だが、果たして安易に受け入れて大丈夫なのか!?

話題のChatGPT(ロイター)
話題のChatGPT(ロイター)

 先月29日の国会ではチャットGPTで作成した質問に岸田首相が答弁して話題となったが、昨年11月末にチャットGPTが公開されてからわずか2か月で全世界のアクティブユーザー数が1億人を突破。TikTok(ティックトック)が9か月、インスタグラムが2年6か月要したことと比べると、その浸透スピードは尋常ではない。

 チャットGPTを開発したオープンAI社のアルトマンCEOは、G7首脳の中で最初に岸田首相と会談し、同社が東京に拠点を設ける考えを表明した。日本経済が凋落しつつあるなか、世界最先端産業であるAI技術を持つ世界的注目企業が、日本を重視する理由は何なのか?

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「オープンAI社にとって日本は最適な環境が整っている」としてこう話す。

「経済の主導権を米国から奪い返したい欧州は、米国の新興技術をそうやすやすと受け入れてくれない。中国は市場規模こそ大きいが、進出したら米議会が許してくれない。その点で日本にはそういった問題が見当たらず、AI関連の知見の蓄積があって優秀な人材も揃っている。大規模な半導体の最新工場建設が進んでいるのも大きなポイントだったのでしょう」

 欧州は将来の世界経済の主役になり得るAI産業潰しに躍起だ。先月には欧州刑事警察機構が、チャットGPTは詐欺などの犯罪に悪用される恐れがあると欧州各国に警告。これを受けてイタリアがいち早く使用を禁止し、ほかの欧州諸国も追随する動きを見せており、欧州進出はほぼ不可能な状況だ。また、中国については“チャイナリスク”が高く、そもそも論外だ。

 そんななか日本は1950年代にコンピューター処理が導入されて以来、第4次AIブームにあるといわれている。日本は古くからマンガやアニメでロボットやAIがテーマに取り上げられており、実際の研究分野でもAIの要素技術を数多く持っており、AI産業を受け入れる土壌があるのだ。

 とはいえ、AIに頼りすぎる社会も問題だ。西村康稔経産相は11日の会見でチャットGPTについて「国家公務員の業務負担を軽減するための活用の可能性、これはぜひ追求していきたい」と発言。1日7時間にも及ぶとされる官僚による国会答弁の作成時間軽減に活用する可能性を示唆した。

 しかし、これにはSNSで「大学生ですら禁止されてるのに自分たちの無能をさらすのか?」「データ改ざんも捏造もできなくなるんだからムリでしょ」と揶揄する声から「国会はその場しのぎでごまかして逃げ切ればOKと考えてるってこと?」といった疑問の声も上がった。

 永田町関係者も「チャットGPTがどんなに精度が上がったとしても、すべての情報はネット上にある玉石混交のもの。チャットGPTが作成したものを官僚がチェックするなら使えるかもしれないが、それなら最初から官僚が作った方がマシです」と、西村氏の発言に疑問を呈した。

 G7の各国首脳に先駆けてアルトマンCEOと会談したことで、岸田首相は自らの実績と胸を張りたいかもしれないが、活用を間違えれば国民の反応は意外と冷ややかかもしれない。