足元に隠された配慮とは――。フィギュアスケートの世界選手権2日目(23日、さいたまスーパーアリーナ)、ペアのフリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の〝りくりゅう〟こと三浦璃来(21)、木原龍一(30=ともに木下グループ)組が141・44点をマークし、今季世界最高の合計222・16点で日本勢初優勝を果たした。同一シーズンでの主要大会全制覇「年間グランドスラム」も日本勢初。頼れる兄貴分の細かな〝気遣い〟が快挙を後押しした。

 最終滑走の〝りくりゅう〟は、終盤のスロー3回転ループで転倒したが、最後まで息の合った演技を披露。優勝が決まった瞬間、2人は熱い抱擁を交わして涙を流した。三浦は「ここまで来られるとは思っていなかった。チームメートの(木原)龍一君や先生に感謝したい」と感慨に浸った。

 フリーではミスがでたこともあり、三浦は演技後、ヒザに手をつき、ガックリした様子を見せた。そんな三浦に手を差し伸べた木原は「僕たちはやることをやってきた。フリーはベスト(の演技)ではなかったけど、一生懸命やったから胸を張ろう。観客席を見てごらん。みんながたたえてくれているのだから」。三浦が顔を上げると、万雷の拍手が沸き起こった。

 結成4季目。9つ上の木原は兄貴分として常に三浦のことを考えて行動している。2人が使用するスケート靴のブレード(刃)を製造する山一ハガネ(愛知・名古屋市)の石川貴規氏は、その一例をこう明かす。「木原さんは自分の滑りはもちろんですが、やっぱり三浦さんを(リフトで)担がないといけない。落とすと一大事なので、ちょっとした変化、ブレードの曲がりだったり、トー(つま先)の出方だったりを気にしています」

 リフト中に木原のブレードが氷に引っ掛かり、三浦が転落した場合は大ケガにつながる可能性がある。木原から「引っ掛かりが多いので削ってください」と要望を受け、トーの出方を調節することもあるという。さらにリンク外でも忘れ物が多い三浦に対し、木原が注意をするのはよくある光景。頼れる兄貴分の気配りは、抜群のコンビネーションを生み出す源だ。

 フィギュア界で新たに刻んだ歴史はゴールではない。三浦は「SPとフリーがそろえられていないので、まだまだかな」。木原も「SPはよかったけど、また自分たちの弱さが見えた。また来季に(完成度などを)詰めていけたら」と、さらなる進化を誓った。