格闘技界のレジェンド・山本〝KID〟徳郁さんが描いた〝最後の壁画〟を後世に残そうと、姉の総合格闘家・山本美憂(48)が奮闘している。2018年9月に41歳の若さでこの世を去った徳郁さんは、同年夏からグアムに渡り闘病していたが、全力を振り絞って地元のカフェの壁に描いた渾身の絵が消滅の危機に。〝神の子〟と呼ばれた弟の生きた証し、思いを多くの人に知ってもらうため、姉が協力者も募って存続に乗り出した。

 常に前に進む格闘家が、新たなチャレンジに挑んでいる。徳郁さんが愛し、最期を迎えた地・グアムで「NORI LOUNGE(ノリ・ラウンジ)」というカフェをスタートさせることになった。

 慣れない経営に急きょ乗り出したのには理由がある。「グアムにノリ(徳郁さん)が、すごく好きなカフェがあって、闘病中に一生懸命描いた絵が今も残っているんです。私たちにとって、ノリの大切な思い出の場所になってました。でも突然、立ち退かなくてはならなくなって…」

 絵が好きで「額少年」の名でアーティストとしても活躍していた徳郁さんは、がんを患い、18年夏にグアムでの治療に踏み切った。現地では、後に美憂と結婚する格闘家のカイル・アグォンら3人が共同経営するカフェを訪れていた。「みんなノリが来ると喜んで『絵を描いてもらおう』と言ってくれて」。病と闘いながらも、徳郁さんは夫人とともに丁寧に作品を描いた。残念ながら秋に悲しい別れが訪れ遺作となってしまったが、カフェの外壁には、徳郁さんの友人でもある地元のアーティストの絵と並び、独創的な絵が残されている。

 その思い出のカフェを、建物の所有者の意向やアグォン以外の共同経営者との意見の相違により、立ち退かなくてはならなくなった。新たな店舗が入れば、徳郁さんの作品を消してしまう可能性が高い。夫となったアグォンと相談し、店を買い取り、徳郁さんの絵とカフェを存続させることを決意。名前を変え、新たにオープンすることになった。

 自己資金を投入するほか、美憂ら同様に徳郁さんの壁画や思いを残したいと考えるサポーターをクラウドファンディングの形で募っている。同サービスの「Makuake」で1月末まで募集中。寄付のリターンには、サポーターの名前を記したボードがカフェに飾られるというプランもある。

「ノリを応援してくださるみなさんのお力を借り、思いを共有し、カフェを運営できたら、と考えています。みなさんにもグアムに来て、ここにノリがいたんだと感じてほしい。そして、ノリのように、観光客と地元客が混ざりあう交流の場になればいいと思っています」

 昨年は徳郁さんが手がけた格闘技ジム「YSA」をリニューアルオープンさせるなど、美憂は精力的に動いている。格闘技界の発展を願ったカリスマの思いをつなぐべく、前に進んでいく。