【取材の裏側 現場ノート】日本代表の専属シェフを長年にわたって務めた西芳照さん(60)が昨年のカタールW杯を最後に〝卒業〟することになった。2004年から日本代表イレブンの食事を担当し、海外遠征に同行し、カタール大会で5度目の〝W杯出場〟を果たした。

 記者は2004年に日本代表が逆境の中で優勝したアジアカップ(中国)の際、日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(会長)のご厚意で西さんの料理を食べる機会に恵まれた。ジーコ監督や選手たちが食事を済ませたあとに会場に入りし、協会スタッフから西さんを紹介していただき「どうぞ、ご自由に」と言われて、ビュッフェ形式の食事にありついた。

 どの料理も美味。イレブンが「西さんの食事がおいしすぎる。合宿中に楽しみ」と語っていたのも大げさではなかった。西さんは、温かい料理をでき立てで提供できるように「ライブキッチン」を取り入れるなど、選手たちをあきさせないように工夫を凝らした。その上で思うように外出できない選手のため、遠征地のご当地メニューを取り入れているという。

 この時、日本代表チームは四川料理の本場・重慶を拠点としていたこともあり「中華のメニューもお出ししています。マーボー豆腐など、選手がおなかをこわさないようにからみを落としていますけど。それに唐辛子は摂取し過ぎると、ドーピングでひっかかる可能性もあるとのことで、気を付けていますね」と語っていた。

 西さんのメニューで選手たちに好評なのはハンバーグと、銀ダラの西京焼き。試合2日前の定番で、前日には体調面を考慮し、栄養価の高いウナギを提供。試合後はカレーライスとなる。2006年ドイツW杯後、日本代表の指揮官に就任したイビチャ・オシムさんは西さんのつくるペペロンチーノに感動し「ペペロン」との愛称で呼んでいた。

(サッカー担当・三浦憲太郎)