〝ママさんアスリート〟を当たり前に――。女子テニス元世界ランキング1位の大坂なおみ(25)が自身のSNSで妊娠を公表し、出産後も競技を続ける意向を示した。女性選手を取り巻く環境について、ジェンダー問題に詳しい1996年アトランタ五輪競泳女子代表で国際連合職員の井本直歩子氏(46)は、〝パパさんアスリート〟と差があると指摘。元選手の視点から、世界で活躍する大坂の「ロールモデル化」に期待を寄せた。
大坂は「将来に向けてたくさん楽しみなことがあります。それらの一つには自分の子供が私の試合を見て、『あれが私のママ』と誰かに言うことです(笑い)」と出産後の現役続行を宣言した。
日本でも出産後に競技を続ける選手が増えている。2000年シドニー、04年アテネと五輪2大会で金メダルを獲得した柔道女子48キロ級の谷亮子氏は「ママでも金」の名言とともに08年北京五輪に出場。銅メダルを獲得した。その後もバレーボール女子で12年ロンドン五輪銅メダルの荒木絵里香氏、カーリング女子で18年平昌五輪銅メダルの本橋麻里氏(ロコ・ソラーレ)ら有力選手が出産後も競技のトップで活躍している。
とはいえ、女性誰もが出産後も第一線で活動できるとは言い難い。井本氏は「男性のアスリートで子供が生まれても競技を続けている選手はたくさんいるが、パパさんアスリートとは呼ばれていない。それはママアスリートがまだまだ少ないからではないか」と指摘。日本では女性が子供の面倒を見る傾向がまだ根強いことから「女性アスリートはトレーニングするときに、子供を誰かに見てもらわなきゃとなるが、男性アスリートの場合はあまりない」と同じ子を持つ選手でも、男女で差がある現状を訴えた。
大坂は20年に黒人差別抗議運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」に参加するなど、社会運動にも関心が高い。出産後コートに立つ際も、女性の社会復帰に立ちはだかる男女差別などの障害に関心を持つことは十分に考えられる。井本氏は「大坂選手のことなので、自分たちの世代の女性とか、次世代の女性に対してそういった道を示していきたいと考えているのでは。また1人のロールモデルが増えたことは素晴らしいと思う」とその活躍に期待した。
世の中に一石を投じることは簡単なことではないが、大坂は世界的なアスリートとして多大な影響力を持っている。「女性の選択肢が増えていくことはまだまだ難しいが、大坂選手のようなハーフの日本人アスリートが、ママさんアスリートの代名詞の1人になっていくことで、多様な女性アスリートの形が示されていってほしい」と井本氏。男女関係なく輝ける社会へ、大坂の行動がスポーツ界をより良く変えるきっかけとなりそうだ。










