【多事蹴論(60)】サッカー界の重鎮たちの批判にエースが猛反発した理由とは――。日本代表が初出場した1998年フランスW杯でメンバー落選となったカズことFW三浦知良に代わって「エース」と呼ばれたFW城彰二は3試合出場も無得点と結果を残せなかった。失意のまま大会を終えて帰国した成田空港では水をかけられるなど3戦全敗の“戦犯”とされ、チームを指揮した岡田武史監督とともに猛バッシングを受けた。
日本代表の新エースとして期待されながらもW杯で勝利を届けられなかったことはもちろんなのだが、サポーターの不満が城に向けられたのは試合中の態度に原因があるとみられている。強豪を相手にする真剣勝負の舞台でなぜか薄ら笑いを浮かべながらプレー。しかもガムをかみながらだったことから、ファンの間で「本気でやってんのか」と批判が噴出。風当たりが強くなっていた。
元日本代表MFで10番を背負ったラモス瑠偉はNHKで1次リーグ第2戦のクロアチア戦(●0―1)のテレビ解説を務めた際、城のプレーぶりに「試合中にへらへら笑ってどうするの?」「ガムをくちゃくちゃかみながらプレーするな」「タレントやっているわけじゃないんだから」などと辛らつな見解を示し、多くの視聴者もラモスの意見に同調した。
また“ドーハの悲劇”で知られる93年米国W杯アジア最終予選で日本代表コーチを務め、市原(現千葉)時代に城を指導していた清雲栄純氏もガムや薄ら笑いについて「ニヤってするのは市原時代からのクセなんだよ。“なんだこりゃ”と思う人もいるだろうからやめた方がいい」と指摘し「外国のチームでガムをのどに詰まらせて死にそうになった選手もいるから」とまな弟子の行動に苦言を呈していた。
しかし、城はサッカー界重鎮のクレームや世論の猛批判に猛反発。本紙の取材に「結果を出していないから何を言われても仕方ない」としながらも試合中に笑顔を見せる行為については「運動生理学の先生にアドバイスを受けた」とし、同年2月の長野五輪スピードスケート女子500メートルで銅メダルを獲得した岡崎朋美らが実践したのを知り、取り入れたという。
さらに「倒されても笑ってるくらいの方が(相手には)不気味に見えると聞いたので」と解説。ガムについても「子供たちにはマネしてほしくない」と前置きし「アゴの筋肉を動かすことで集中力を高めることができる。結果を求める立場だから、いいと思ったものはなんでもやる」との理由を語った。その上で各方面から出ている批判について「残念です」とうなだれていた。
W杯解説で城を痛烈批判していたラモスはその後、詳細な事情を把握したようで「悪かった」と謝罪。すでに和解しているという。 (敬称略)












