酒と健康に関する著書で知られ、数多くの医師を取材している酒ジャーナリストの葉石かおり氏が、自分も大好きな酒を元気に飲み続けるためのコツを探ります。

 

 飲んだ翌朝、玄関を見ると靴がない。いくら酔っていたとはいえ、さすがに裸足で帰るわけはないので、靴はどこかにあるはず。しかし、家中を探しても見当たらない。「しゃあない。お腹が空いたし、コンビニでも行くか」と玄関の扉を開けたところ、探していた靴がそこにあった。相当、酔っぱらっていたようだ。

 コロナ禍、逆流性食道炎になり、酒量を減らしてから、冒頭の“靴事件”のようなことがたまにあり、「酒に弱くなったなぁ」と実感するようになった。さして量を飲んでいないのに(たぶん)。この件を親しい医師に話すと、「葉石さんは飲み続けて、酒に強くなったタイプですね」と言われた。酒を飲んで強くなることを「肝臓が鍛えられる」ともいうが、実はこれホントのことなのだ。

 体内に入ったアルコールの代謝経路は、大きく分けて2つある。1つはアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素によるもの、もう1つは薬などをはじめとする異物の代謝に使われるMEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)を使った代謝経路だ。私のように本来、酒が弱い人間は、飲み続けるうちにMEOSの酵素が誘導されるようになり、徐々に強くなっていくという。
 しかし、飲まない日が続いたり、酒量が減ったりすると、本来の強さに戻ってしまう。そう、体質的に酒の耐性が低い人は、肝臓を鍛え続けなければ酒に弱くなるのだ。長引くコロナ禍で、以前より飲む機会が減り、「以前より酒が弱くなった」と思う方は、これまで以上に注意したほうが良さそうだ。

 具体的には①血中アルコール濃度を急激に上げないよう空腹で飲まない②度数の低い酒を選ぶ③酒と同量の水を飲むなどがおすすめだ。また、コロナ禍以前と同じペースで酒を飲まないことも必須。酒の耐性が低くなっていることを自覚し、時間をかけて味わうように酒を飲もう。“靴事件”を起こすような人間のアドバイスは、説得力がないと思われるかもしれないが、医師からのお墨付きなのでご安心を。