「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72)が2013年12月に射殺された事件で、京都府警は28日、殺人と銃刀法違反の疑いで特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部の田中幸雄容疑者(56=別事件で服役中)を逮捕した。全国チェーンの企業トップが標的にされた事件は発生から約9年で重大局面を迎えた。京都府警と福岡県警は合同捜査本部を設置する方針で、背後関係や動機など全容解明を目指す。しかし、この事件はあまりにも謎に包まれている。
田中容疑者と大東さんとの明確な接点は明らかになっておらず、府警は田中容疑者が何者かに依頼された可能性もあるとみて取り調べや関係先の家宅捜索など捜査を本格化させる。捜査関係者によると、現場付近でたばこの吸い殻が見つかり、付着物のDNA型が田中容疑者のものと一致。普段吸っていたたばこと同じ銘柄だった。
逮捕容疑は13年12月19日、氏名不詳の人物と共謀し、京都市山科区の本社前駐車場で、拳銃で大東さんを射殺した疑い。
大東さんは社長就任後、王将フードサービス創業家が反社会的勢力と関係を持っていたため、その関係を断ち切ろうとしたといわれている。また、ほかのさまざまな闇利権を清算し、きれいな会社にしようとしたため、敵が多かったとも。殺害を謀る“黒幕”候補は数多く、田中容疑者は実行犯の一人との見方が強い。目撃情報はほぼなく、付近に防犯カメラは少ない。その中で、現場のたばこの吸い殻のDNAで田中容疑者が確実にそこにいたという状況証拠での逮捕だ。しかし、吸い殻は捜査をかく乱するために置かれた可能性を指摘する声があったほか、動機が見当たらないことなどから逮捕を見送ってきた。
元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は事件当時から現地取材し、情報収集してきた。「事件の少し後から、田中容疑者の名前は出ていました。しかし、そのころから今でも、彼は殺害を依頼されただけで、しかも“見届け人”か“サポート役”であり、メインじゃなくサブの役割だと言われていました。ただ、どこが依頼したのかは、大東さんに敵が多すぎて分からないようです。それなのに、実行犯としては『近い国から来た女性の殺し屋がやった』という説がずっとささやかれています。なぜ、ヒットマンにはそぐわない『女性』という犯人像が出るのか。火のないところに煙は立たないということわざがありますが、殺害を依頼するなど事件を深く知っている人から漏れた情報だからという可能性があります」
さらに銃に詳しい北芝氏は使用された銃が25口径だったことに注目している。
「25口径という銃は非常に珍しい銃で、日本では入手できないと思います。入手が容易な22口径では少年漫画週刊誌を貫通できない程度の威力。確実に殺害するなら38口径。25口径はとにかく珍品です。だから、日本人じゃなく、海外から来た人が犯人だと思われているのです」(同)
また、NHKは「逮捕に向けて積極派と消極派で判断が分かれる場面があった」と報じている。
北芝氏は「消極派がいたのも、事件に外国人が絡んでいたら政治判断が必要で、政権にお伺いを立てなければいけなかったからかもしれません。もしくは、黒幕までたどり着いてから逮捕したかったからかもしれません。その中で、犯人のうちの一人は田中容疑者だと分かっているのだから、どこかで踏ん切りをつける必要があったのでしょう。そして、田中容疑者の供述に期待をしているのでしょう。でも、工藤会の人間はタフです。取り調べは難航するでしょうね」と指摘した。
全容解明までまだまだ時間はかかりそうだ。












