1日に死去した〝燃える闘魂〟アントニオ猪木さん(享年79)の追悼記者コラム第11回。最後は国民的スーパースター2人がすれ違った、数少ない現場を振り返る。
【さらば燃える闘魂11・最終回】
2003年の暮れ。猪木さんは大みそか大会「INOKI BOM―BА―YE(猪木祭り)」のプロモーションであちこち飛び回っていた。この年の猪木祭りはトラブル続出の大会として語り継がれているが、猪木さん自身には大きな〝収穫〟もあった。
それがこの写真。そう、長嶋茂雄さんと猪木さんの2ショットだ。プロ野球界とプロレス界のスーパースター2人が1枚の記念写真に納まったことはこれ以降、08年1月の張本勲氏のパーティーでしかない。
ただ正直に言えば、これが撮れたのは、猪木さんと当時の事務所関係者のおかげだった。猪木さんと長嶋さんは「猪木祭り」のあおり番組で共演したのだが、猪木さん側が収録前の控室に記者も招き入れてくれた。
さすがの猪木さんも長嶋さんとの対面には緊張しているのが伝わってきて、「よし、行こっ!」と気合を入れて長嶋さんの控室に入っていった。実はこの時、長嶋さんサイドには写真撮影の話を通しておらず、猪木さん側からは「東スポってことは言わないでね」ときつく言われていた。これぞ常在戦場、出たとこ勝負の猪木イズムだ。
カメラを持った記者が入室すると案の定、長嶋さん側の関係者から詰問調で「あなた、誰ですか?」。いきなりスリリングなムードが漂い、こりゃまずい…その時だ。
猪木さん自ら「いやいや、うちの事務所の子なんでね、フフフッ…」。
猪木さんの当時のマネジャーも「そうなんですよ~~」と適当に話を合わせてくれて何とか2ショットが撮れたのだが、長嶋さんサイドは納得できない様子。満面笑みの猪木さんとは対照的に、長嶋さんが何だか硬い表情なのはそういう事情があったのだ。
結果的に国民的スーパースターをだまし討ちすることになり、非常に心苦しかった記憶があるが…ウソをついてでも2ショットを撮らせてくれた猪木さん。同時代を生き、光り輝いていた長嶋さんにはやはり、特別な思いがあったのだろう。写真の笑顔がそれを物語っている。
改めて猪木さんのご冥福をお祈りいたします。
(元猪木担当・初山潤一)












