対ドル円相場は12日、一時1ドル=146円を突破した。政府・日銀は先月22日に円買いによる為替介入を行ったが、すでにその効果は吹き飛んでおり、“再介入”の可能性を指摘する声も上がっている。しかし、経済評論家の山本伸氏は「政府・日銀に円安を止める気はない」と断言。1985年に行われたプラザ合意直前の1ドル=240円時代に戻る、と驚きの予想を展開した。

 12日の東京外国為替市場の対ドル円相場は、約24年ぶりに1ドル=146円台まで円安が進み、1998年につけたバブル後最安値となる1ドル=147円66銭が迫ってきた。

 前日には財務省の神田真人財務官が、先月の為替介入時の相場水準に戻ったことを受けて「ワシントンへ移動する飛行機の中からでも介入の決定を下すことはできる」と話せば、鈴木俊一財務相も「万が一、今後過度な変動があれば適切な対応を取ることに変わりはない」と“口先介入”したが、あっけなく146円台への突入を許した。

 とはいえ、先月の為替介入では一気に5円近く円高に振れたため、バブル後最安値を目前にして個人投資家を中心に再介入を恐れているのも事実だ。

 経済評論家の山本伸氏は再介入について「そもそも政府・日銀に円安を止める意思はない」として、こう解説する。

「ポイントは鈴木財務相の『過度な変動』というひと言で、裏を返せば“過度”じゃなければ介入しないということ。実際、日銀の黒田東彦総裁が異次元金融緩和継続の意思を表明しているのだから、政府・日銀が円安を容認しているのは確か。今の状況では円安を止めようがない。むしろ“失われた30年”で弱体化した日本にとって、これまでが円バブルだったと言っていい」

 実際、先月22日の為替介入は、9月に入ってから一気に6円近くも円安が進行してのことだった。「過度な変動」か否かが、為替介入のポイントということだ。

 一方で、円安に最も影響を及ぼしているのが、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が決める政策金利。現在は3・25%まで引き上げたが、年内にはさらに4・25~4・5%まで引き上げると予測されているだけに、日銀が金融緩和でゼロ金利政策を継続する限り、今後も金利差から円安が続くのは間違いないだろう。

 ただ、金融緩和を続ける日銀の黒田総裁の任期は来年4月8日まで。黒田総裁が退任すれば状況が変わるという見方もあるが…。

「報道される機会がないが、岸田文雄首相は黒田総裁と同じ円安容認派。当初掲げた『所得倍増計画』は、個人投資を基本とした『資産所得倍増計画』へと変遷したが、それでも所得を倍増させるために輸出業を中心とした経済立て直しで、円安誘導が必要という考えは変わらない。黒田総裁が退任したとしても、岸田政権が続く限り円安は続く。現在の世界経済を考えると1ドル=240円が視界に入る」(山本氏)

 円安を利用して景気回復を図るのはわかるが、国民が痛みを伴うのも事実。国民の生活が壊れるのが先か、それとも景気回復が先か。何やらチキンレースの様相を呈してきた。