「鉄人」の素顔とは――。大相撲秋場所千秋楽(25日、東京・両国国技館)、幕内玉鷲(37=片男波)が幕内高安(32=田子ノ浦)を押し出して13勝目(2敗)。2019年初場所以来、21場所ぶり2度目の優勝を果たした。37歳10か月での制覇は年6場所制以降で最年長記録。初土俵から無休で出場を続ける大ベテランは、角界屈指の〝気配り上手〟としても知られている。

 今場所の玉鷲は主役にふさわしい活躍を見せた。1横綱3大関を総ナメにし、平幕で37年ぶりの快挙を達成。初土俵からの連続出場は歴代3位(1463回)となった。締めくくりは、最年長での賜杯奪取。大ベテランは表彰式のインタビューで「皆さんの応援のおかげで2回目の優勝をすることができました。うれしいです。勝った瞬間の気持ち? やったぞ!(と思った)」と喜びをかみしめた。

 そんな玉鷲と10年近く親交がある「片男波部屋行橋後援会」の江本満会長は「会えば好きになるキャラクターですね。気遣いがものすごくできて若手に粗相があると注意する一方、笑わせるようなことをしたりユーモアもある。ひょうきんで頭がいい」と横顔を明かす。コロナ禍前は九州場所の時期に福岡・行橋市の学校や施設を訪れ、司会や仕切り役としても手腕を発揮していたという。

 その振る舞いは〝神対応〟としても評判だ。「例えばパンの差し入れをもらったときも誰かにあげたり、そのまま置いて帰る力士が少なくない中、玉鷲はくれた人の目の前でガブッと食べて『おいしい! ありがとう』というタイプの人間。機微がわかっているというか、相手がどうすれば喜ぶかが自然と備わっているんですよね」(江本氏)

 18歳でモンゴルから来日した玉鷲は、すでに心も体も〝日本人〟。昨年8月には日本国籍取得の手続きを進めていることも明かしている。江本氏は「あるパーティーで死ぬ前に何が食べたいかという話になって、玉鷲は『日本の田舎で取れたおいしい米と水で炊いたご飯をいっぱい食べたい』と言っていましたね。日本人より日本人っぽいところがあるなと感じました」と証言した。

 その玉鷲は九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)に向けて「いつもと変わらずいい相撲を取って、皆さんを喜ばせたい」と早くも気合十分。衰え知らずの鉄人にとっては、2度目の賜杯も〝通過点〟と言えそうだ。