安倍晋三元首相(享年67)が無職・山上徹也容疑者(41)の凶弾に倒れてから15日で1週間となった。痛恨の大失態が指摘される奈良県警は連日の現場検証を行い、14日には警察庁の「検証・見直しチーム」が県警本部に到着。襲撃時の警護の状況把握が本格的に行われる。そんな中、不謹慎にも襲撃時の山上容疑者を再現したフィギュアが中国で販売されているという。これには中国事情通も「けしからん」と怒りをにじませた。
事件の経緯を巡り、山上容疑者が奈良での遊説日程について「(事件前日の遊説先で銃撃を断念した)岡山県からの帰りの新幹線車内で自民党のホームページ(HP)を見て把握した」という趣旨の供述をしていることが14日、分かった。奈良県警は、山上容疑者が安倍氏の予定を執拗に調べ襲撃機会をうかがっていたとみて調べる。
山上容疑者は「最初は圧力鍋の爆弾を作ったが、関係のない人を巻き込むのでやめた。標的を絞りやすい銃を作った」と説明。自宅からは銃撃に使用した銃とは別の自家製銃7丁が押収されており、1~2丁は作りかけだった。日程の件も含めて、高い計画性がうかがえる。
そんな山上容疑者と思われるフィギュアが中国のインターネットサイトで販売されている。容疑者は事件時、マスクにメガネ、グレーのポロシャツにカーキ色のカーゴパンツ、黒い靴といういでたち。肩から青のショルダーバッグを斜め掛けしていた。
フィギュアはその際の山上容疑者を再現したものとみられ、右手には銃撃に使われた鉄パイプ2本を束ねた自家製の銃を握っている。左太もものポケットに差し込まれたペットボトルまで再現されている細かさだ。
64分の1スケールで、「人偶兵人日本日服(日本服の人形兵)」などと紹介され、事件3日後の11日に販売された時点では約2600円。ただし書きとして「武器は今後更新」「現場のSPを数人追加する」とある。フィギュアで凶行の現場を再現しようというのだろうか。実際、14日までには銃を構え、発射時と思われるバージョンのフィギュアも追加された。不謹慎極まりない。
ユーチューブチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」で日中の情報を発信している中国人ジャーナリストの周来友氏は「けしからんです。こんなものを出すのは不謹慎です。どうしてこんな連中がいるんでしょうか」と語る。
中国では習近平国家主席が9日、岸田文雄首相に弔電を送った。中国国内のネットやSNSでも頻繁に安倍氏の死去に関するニュースが報じられている。しかし、SNSでは心ない言葉が多く寄せられているという。
人民日報日本支局の女性記者が、自民党本部に設けられた献花台に花を供える様子の写真とともに、哀悼の言葉をSNSに投稿したところ、そのSNSに「追悼現場を報じるならまだしも、なぜ自主的に献花しているのか」「国営メディアの記者として正しい行為なのか」などと批判の声が多く寄せられ、炎上した。
一方、少数ながらも「なぜ追悼することが責められなくてはいけないのか」「自身が滞在している国家の元首相が亡くなり献花することは人間として自然なことだ」などと冷静な書き込みも見られる。
こうした“安倍憎し”の論調が生まれるのも、中国共産党が、国民の政権批判のはけ口として日本敵視政策を利用し続けてきた結果だろうか。周氏は「こうした世論をつくり出してしまったのは中国政府自身です。新型コロナウイルスによる市民のストレス発散のはけ口に、こうした事件が利用されることがあってはなりません」と訴えた。