ゼロからの再出発だ。大相撲名古屋場所2日目(11日、愛知県体育館)、元大関の三段目朝乃山(28=高砂)が三段目剛士丸(25=武蔵川)を寄り切って完勝。約1年2か月ぶりの本場所復帰を白星で飾った。自らの不祥事で6場所出場停止などの処分を受け、番付は大関から西三段目22枚目まで転落。信頼回復に向けた一歩踏み出した朝乃山に、近大時代のチームメートがエールを送った。


 西の花道に朝乃山が姿を見せると、館内は大きな拍手に包まれた。418日ぶりの出場に表情から緊張感が伝わってきたが、土俵に上がれば関係なし。立ち合いから一気に攻め込み、剛士丸を一蹴。再び拍手を浴びた〝主役〟は「すごくうれしかったです」と感謝の思いを口にした。

 ここまで長い道のりだった。昨年5月の夏場所中にコロナ対策の規則(不要不急の外出禁止)に違反していたことが発覚。翌場所から6場所出場停止と6か月の報酬減額50%の処分を受けた。その間に祖父と父が亡くなり「引退」の2文字も頭によぎった。それでも師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)に「親のためにも、もう一回頑張ろう」と励まされ、本場所の土俵へ戻ってきた。

 もちろん、重い処分を受けた原因は自らにある。日本相撲協会は当初の〝虚偽報告〟を悪質と判断。出場停止は異例の長期間に及んだ。「一番つらかったことは、不祥事を起こした時に相撲協会にうそをついたこと」。かつての看板力士は、反省の言葉も忘れなかった。

 そうした中、近大相撲部で同期の長内拓磨さん(29)も元大関の再起を願う一人だ。現在も定期的に連絡を取り合う仲で、最近は以前の明るさも戻ってきているという。長内さんは学生時代の朝乃山について「(相撲部の)全体の稽古が終わってから、四股やすり足といった体幹強化につながることをずっとやっていましたね。それが今の強さにもつながっていると思います」と証言する。

 相撲に対して真摯に向き合ってきた姿を知るだけに「実力は申し分ないと思いますし、ましてやケガで落ちたわけじゃない。1年間稽古をやってきたので大丈夫だと思います」と太鼓判。苦楽をともにした〝戦友〟へ向けて「ケガなく復帰場所を終えてもらえたら。プロの世界ですので何が起きるか分かりませんが、7番勝って来場所につなげていってほしいですね。ポカだけはしないように(笑い)」とエールを送った。

 その朝乃山は「もう一度日本相撲協会、応援してくださるファンの皆さんのために、また応援、信用してもらえるように相撲に向き合っていきたい」。幕内の舞台への返り咲きへ向けて、もう迷いはないはずだ。