3大会ぶりに五輪の正式種目に復帰した女子ソフトボール。2008年北京五輪以来の金メダルを目標に掲げる日本代表は、今夏に照準を合わせてチームづくりを進めてきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で東京五輪が来夏へ延期となり、強化プランにも大きな狂いが生じた。そんな中、日本代表の宇津木麗華監督(57)が本紙の独占インタビューに応じ、コロナ禍での苦悩を告白。さらに大エース・上野由岐子(38=ビックカメラ高崎)の起用法についても言及した。
東京五輪が通常通り開催されていれば、女子ソフトボールは全競技に先駆けて7月22日にスタートするはずたった。宇津木監督は「自分の計画の中で、3年間どうやって準備していくかっていう形を組んできて、順調に3年間きていた。でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延びた。普通に延びるならいいけど、世界のどこにも行けないので、合宿とかなかなかできないし、選手の状況も把握できていないので、ちょっと不安はありますね」と複雑な思いを口にした。
実際に、コロナ禍で3月以降は代表合宿が相次いで中止に。日本リーグ終了後の今月17日から代表合宿を再開したが、コロナ感染が世界中で再拡大を見せていることから、年明けに予定される海外遠征を行えるかは不透明だ。
また、代表選手のケガやコロナ感染時のリスクも懸念している。「とにかくケガと病気がないように。ケガがあると、元の体に戻れない。病気になると、3年間準備してきたトレーニングの成果が一瞬で終わってしまうので、コロナになったときに今まで練習で培ってきた体力が一瞬で消えてしまうのではないかっていう怖さはある。それが一番怖いですね」と表情を曇らせる。
「海外勢にも対応できる」と宇津木監督らが選出した最終候補選手20人は、基本的に変更しない。そのため、一人でも感染した場合は、戦術等の変更を余儀なくされる可能性もある。
とはいえ、いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。目標とする東京五輪金メダルに向け、選手たちは動きだした。もちろん、世間の注目の的は上野だ。北京五輪では、2日間で決勝トーナメント3試合を完投。413球の熱投で日本を世界一に導いた。
その実力は今でも衰えておらず、周囲からは「東京五輪は上野一本で」との声が漏れている。上野自身も「全部投げられるように準備していく」と話しているというが、宇津木監督は「正直言うと、あまりそういう思いはないんですよね。やっぱり藤田倭(ふじた・やまと=29、太陽誘電)も成長してきたので、ダブルエースでいきます」と明かした。その背景には藤田の成長だけではなく、宇津木監督の金メダルへの並々ならぬ思いが隠されている。
日本にとって最大のライバルは、2018年世界選手権決勝で敗れた米国。両国が順当に勝ち進んだ場合は、オープニングラウンドで5試合戦った後に、決勝で対戦する。宇津木監督は「上野は今の状況だったら毎日投げられるだろうけど、精度が落ちていくと思う」と推測。「極端に言うと、アメリカは“連合国軍”みたいなチーム。最後の試合は上野と藤田が100%でいけるような場面をつくりたいなと思っているので、万全な状態で2人が投げられるようにする必要がある。ただ、予選(オープニングラウンド)も負けてはいけないので、上野と藤田の力を使っていかないといけないと思っています」と声を大にする。
24年パリ五輪では、ソフトボールが実施種目から外れることが決定済み。それでも、宇津木監督は「ソフトボールをやっている今後の子供たちのためにも、自分たちは全力で金メダルを取りにいく」と気合は十分。北京五輪の感動を再現するために、金メダル街道を駆け抜ける覚悟はできている。
☆うつぎ・れいか 1963年6月1日生まれ。中国出身。交流があった元日本代表監督の宇津木妙子氏を頼って88年に来日。95年に日本国籍を取得した。現役時代は右投げ左打ちの内野手として活躍し、日本代表では2000年シドニー五輪銀メダル、04年アテネ五輪銅メダルに輝いた。引退後は指導者としても豊富な実績を残す。11年からは日本代表監督に就任。12、14年の世界選手権で優勝を果たした。いったん退任したが、16年11月から再び日本代表監督を務める。












