元TBS記者の山口敬之氏(53)から性暴力被害を受けたとして、民事裁判で勝訴したジャーナリストの伊藤詩織氏(30)に野党が秋波を送っている。衆院選で打倒安倍政権のシンボルになると水面下で擁立の動きが出ているのだ。

 一審判決から一夜たった19日、伊藤氏と山口氏のバトルは再びゴングが鳴った。日本外国特派員協会で、山口氏と伊藤氏はそれぞれ会見を開いた中、伊藤氏は一ジャーナリストとして、山口氏の会見に出席。途中、伊藤氏の存在に気付いた山口氏が「本人の前で詳細を話すことはよくない。裁判資料を見てもらいたい」と触れる場面もあった。

 会見では司会者から「お説教や感情的な質問はやめてください」と異例の注意も出る中、山口氏は外国人記者から“上級国民”呼ばわりで針のムシロに。一方、伊藤氏は性犯罪被害で声を出した勇気ある女性、「#MeToo運動」のシンボルとして、メディアや支援者から引っ張りダコとなっている。

 永田町関係者は「野党は山口氏が逮捕されなかったり、不起訴になったのは安倍首相と関係が深い背景があったからだと訴えてきた。伊藤氏には当事者として、性差別だけでなく、安倍政権の私物化を訴えられるとして、立憲民主党や社民党、共産党の議員が触手を伸ばしています」と指摘する。

 実は、既に2年前の衆院選で伊藤氏に具体的なオファーを出した党があった。当時、希望の党で候補者選定に当たっていたジャーナリストで現在、NHKから国民を守る党の幹事長を務める上杉隆氏は、こう述懐する。

「内閣官房の中で隠されている情報を出すのはジャーナリストとしては限界がある。政権交代で情報公開する手もあると伊藤さんに伝え、小池百合子さん(当時希望代表)の了解を得て、菅義偉官房長官や萩生田光一氏(現文科相)の選挙区も含めて出馬を打診しました。伊藤さんは『ジャーナリストとして生きたい』との返事で、話は消えました」

 それから2年がたち、民事の勝訴で、伊藤氏が「ブラックボックス」としていた闇は開きつつある。再び自身に注目が集まる中、“ジャンヌ・ダルク”になる日は来るのか――。