60年以上もの間、「塩は高血圧の元凶」とばかりに官民あげて減塩運動が展開されてきた。

 しかし、血液や羊水の塩分のバランスと海水のそれはほぼ同じだ。始原生命が海水の中で誕生した証左である。血液のことを血潮ともいう。救急車で運ばれてくる死ぬか生きるかの患者に行われる点滴は「生理的食塩水」か「ブドウ糖(糖分も最近悪者にされている)」である。つまり、「塩」と「糖」こそが、我々、動物の根源的な栄養素ということになる。

 塩は人類最古の調味料で、西洋にも日本にも「塩」のつく地名が多く存在している(塩は英語でsalt、独語でsalz)。

 Saltcoats(ソルトコーツ)…スコットランド

 Salzburg(ザルツブルグ)…オーストリア

 Salzgitter(ザルツギッター)…ドイツ

 日本にも塩を運ぶ「塩の道」に沿って「塩川」「塩島」「塩谷」「塩原」など、塩に因んだ地名がつけられ、そこに宿場ができ、人や種々の物品が交流し、日本の発展に大いに寄与した。

 古代ローマ時代は「おいしいものが健康食と考えられ、塩こそ最上の健康食」とされていたので、「塩」(sal)から「健康」(salus)という言葉が作られた。

 兵士の給料の一部が、塩で支払われていたので「salariedman」(サラリーマン)の語源となった。生野菜には塩をかけて食べたので「salad」(サラダ)という。

「敵に塩を送る」は戦国時代、武田信玄が今川・北条両氏の「塩止め」にあった時に、「塩が不足すると力が出ないので、正々堂々と戦うために、越後の上杉謙信が敵の武田信玄の兵士たちに塩を送った」故事からきている。