世界遺産にも登録されている日光東照宮には、東照大権現となった徳川家康が祭られています。なぜ日光なのかというと、家康の遺言に「日光山に小さな堂を建てて勧請し、神としてまつること」と記されていたためです。

 では、なぜ日光を選んだのでしょうか? 地図で見ると分かりますが、日光東照宮は江戸のほぼ真北に位置しています。つまり、家康は北極星のパワーを借り、幕府と日本の平和を守るために日光を選んだのです。

 日光に祭られることは望んだものの、遺言からも分かる通り、家康はあれほど豪華絢爛なお堂に葬られることは望んでいませんでした。しかし、家康を敬愛していた3代将軍・家光は「小さなお堂に東照大権現様を祭ることなど許さない!」と言い、延べ453万人を動員し、絢爛豪華な日光東照宮を造り上げてしまいました。

 ところで、日光だけではなく、全国には大小130近くの東照宮が存在します。あまり知られていませんが、北方領土の中で最も大きな択捉島にもエトロフ東照宮がありますし、沖縄県那覇市にある護国寺内にも東照宮が置かれています。このように、東照宮が全国に点在するのはなぜでしょうか。

 これは、地方の大名たちが東照大権現様をお祭りすることによって「当家は徳川家への忠誠を誓っています」と示し、謀反の疑いをかけられたくないという思いによるものだといわれています。

 その証拠に、江戸時代には全国に500以上の東照宮がありましたが、明治維新以後は廃社や合祀が相次ぎました。つまり、徳川の支配が終わったから祭る必要がなくなったというわけです。

 ◆平川陽一  早稲田大学卒。主に歴史ミステリーの分野で活躍。著書に「世界遺産・封印されたミステリー」「戦争で読む日本の歴史地図」「日本列島 名城の謎」などがある。