パソコン遠隔操作事件で4日、東京地裁(大野勝則裁判長)は威力業務妨害などの罪に問われていた片山祐輔被告(32)に懲役8年を下した。4人の誤認逮捕者を出し、警察や弁護士までもを翻弄した事件だったが、重すぎるのか妥当なのか?

 判決文では「国家権力への恨みから捜査機関を出し抜き、自分の知識・技術の腕試しをしたいと考えた悪質なサイバー犯罪だ」と非難。「見ず知らずの無実の人を犯人に仕立て上げた」と誤認逮捕の責任も片山被告に負わせた。

 佐藤博史主任弁護士は「求刑10年で、9年もありうると思っていたから、そういう意味では最悪は免れた。できれば7年がベストだったが、期待は裏切られた」と語る。当初、片山被告は冤罪を主張したこともあり、「真実がゆがめられなかった点は良かった。敗れるべくして敗れた。刑事事件の解決としてはこれでいい」と認める。今後、控訴するかどうかを片山被告と話しながら決めるという。

 威力業務妨害事件として懲役8年は長い。だが、片山被告は最高刑10年の「航空機の強取等の処罰に関する法律」(ハイジャック防止法)違反にも問われていた。航空機への爆破予告により、一度飛び立った飛行機が成田空港に引き返すという事態になった。検察は併合罪と累犯加重で最大で求刑30年とできるところを10年にした。

 このまま懲役8年が確定したとして、いつ出所できるのか。佐藤弁護士は「刑期の3分の1を過ぎたら仮出所できるようになります。ただ、相場では5分の4は過ごすもの。模範囚だった場合ですけどね」と説明する。算入される未決勾留350日を引くと、6年弱で出られる計算になる。

 心配されるのは片山被告の精神状態だ。昨年5月に真犯人メールを送信後、失踪。「死のうと思った」と話した。以前、刑務所に入ったときに刑務官からハラスメントを受け、トラウマを抱えているという。

 佐藤弁護士は「片山さんは『何年務めないといけないんですか』と聞いてきたりと、ある意味で前向き。現実を受け止め、生きようという思いがある」と心境の変化を指摘した。反省の兆しか。