「沈黙」は「敗北」ではない――。メッツのオフシーズンは、最後に笑うための静寂だったようだ。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」がメッツの今オフ編成内情について明かし、大きな反響を呼んでいる。

 同サイトによれば、メッツは今オフのストーブリーグで序盤は主力流出が相次ぎ、出遅れ感すら漂っていたものの水面下で周到な改革を進めていたという。象徴的だったのが、ボー・ビシェット内野手(27)の獲得だ。交渉はビシェットがブルージェイズからFAとなった昨年11月から密かに始まっており、メッツは年明けの1月中旬に3年総額1億2600万ドル(約194億円)で合意。しかも最初の打診はビシェットの〝本職〟である「遊撃」ではなく「二塁」だったという。

 改革の核となるべき〝ニューカマー〟には、個人的な感情に左右されずチーム事情を素直に受け入れる順応性と柔軟性を求めた。球団側は守備力、とりわけ二遊間の改善を最優先に据え、配置転換や複数ポジションが対応可能なユーティリティー性も高い選手の獲得を前提にロースターを再設計。結果として、ビシェットは最終的に三塁での起用に同意し、攻守の安定を打線にもたらす役割を担うことになった。

 さらにFA市場ではデビン・ウィリアムズ投手(31=前ヤンキース)、ホルヘ・ポランコ内野手(32=前マリナーズ)、ルイス・ガルシア投手(39=前エンゼルス)を獲得。29日(日本時間30日)には、歴代5位の通算440セーブを記録しているクレイグ・キンブレル投手(37=前アストロズ)とマイナー契約を結び、周囲を驚かせた。トレードでも昨季ナ・リーグ最多勝右腕のフレディ・ペラルタ投手(29=前ブルワーズ)、ルイス・ロベルト・ジュニア内野手(28=前ホワイトソックス)ら大物を次々と獲得し、気が付けば「超大型補強」を成功させている。

 一方で、人気選手の放出という〝痛み〟も受け入れた。ファンの象徴だったピート・アロンソ内野手(31=オリオールズ)やエドウィン・デイアス投手(31=ドジャース)らスター選手を手放し、ブルペンもあえて余白を残す編成へ切り替えた。即戦力を詰め込むのではなく、スプリングトレーニングから台頭する無名戦力を受け入れる余地を残す――。それがフロントの貫いた〝哲学〟だった。実際、クローザー候補の再編や短期契約の積み上げは、シーズン中の可動性を高める狙いが透ける。

 さらに、ビシェット獲得を〝ドミノの起点〟として外野・先発投手市場にも本腰を入れた。中堅守備の強化と先発の柱の確保は並行して進み、トレードでは「出すべき選手は出し、守るべき核は守る」規律を徹底。ライバル球団の幹部も「地区の最上位と肩を並べる存在」と評価するまでに様相は変わった。

 派手さだけでなく計画性も順守。沈黙の裏で積み上げた一手一手が、年明けに一気に結実した。メッツは〝反撃〟に転じたのではない。最初から「その時」を待っていただけだった。