フィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビッグハット)は25日、男女ショートプログラム(SP)が行われる。昨年覇者の紀平梨花(18=トヨタ自動車)は午前11時から公式練習を行った。

 黒と赤の新衣装に身を包んだ女王。新演目となるショートプログラム(SP)の曲かけ練習ではトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をきっちり成功させ、順調な仕上がりを見せた。

 だが、今回の注目ポイントは「片手側転」というトリッキーな技だ。エキシビションではなく、公式試合で側転が入ったプログラムは恐らく〝史上初〟だろう。詳細な記録はないが、多くのフィギュア関係者は「見たことがない」と口を揃える。フィギュアを草創期から知る杉田秀男氏(85)も「初めてでしょう」と証言する。

 この側転にこそ、スケーター紀平の真価が詰まっている。まずは天性の身体能力だ。幼稚園時代から逆立ちはお手の物で、運動会では間違えて片方だけ姉のブカブカな靴を履いてしまったのにブッチギリの1位。他競技でも成功したと思われる抜群の運動神経と体幹を感じさせてくれる。

 また、側転はジャンプやステップのように、それ自体は加点の対象にならない。しかし、転んで失敗すればもちろん減点。リスクの方がはるかに大きいのだ。それでも挑戦するのは、新型コロナウイルス禍という未曽有の事態を経験する中で、何か新しいことを…と模索した結果。どんな境遇でも全てをチャンスに変える紀平の生き方が、この側転に詰まっている。

 ファンの間で〝神演目〟と言われるSPは、25日午後8時50分にスタートする。