新国立競技場を負の遺産にしないための運用のめどはついた?

2020年06月20日 11時00分

4年前に派手な開会式を行ったリオのマラカナンスタジアムは、最近コロナの対応拠点として仮設病院に(ロイター)

【どうなる?東京五輪・パラリンピック(68)】“負のレガシー”にするわけにはいかない。来夏に延期となった東京五輪で、新たに生まれ変わった国立競技場は開閉会式や実施競技で注目の的になること間違いなし。一方、五輪後はスポーツやイベントでの利用が考えられているが、運用については課題を残したままだ。そんな中、本紙のオンライン取材に応じた東大卒の元ロッテ投手でスポーツ経営学を専門とする桜美林大教授の小林至氏(52)がメインスタジアムの「問題点」を指摘した。

 昨年11月に完成した新しい国立競技場は国内最高の整備費1569億円が投じられた。東京五輪開催は1年延期となったが、会場では開閉会式、サッカー、陸上競技が実施されるとみられ、注目度は高まるばかりだ。しかし、小林氏はこれまで大会準備を目的とした費用を「スポーツ業界活性化のための起爆剤」と期待を込めながらも、「新国立」には納得していない。

 小林氏(以下小林)せっかく1500億円もスポーツ施設のために使うのであれば、もっとましな使い方があるだろうにと悔しいのです。国立競技場を今後、収支トントンで回すためには、毎年50億円以上の利益を上げる必要がある。そのためにはプロ野球の本拠地にした上で、そのほかの日も万単位の集客が見込めるイベントを誘致するなど、高単価のイベントを高い稼働率で回さないといけないのですが、そうしないのでしょう?

 五輪という名の“大義名分”で過去にも数々の競技会場が建設された一方、大会後に有効利用が不可能な施設を生み出すことにもなった。直近ではリオ五輪で開閉会式が行われたマラカナンスタジアムがいい例だ。

 小林(同スタジアムは)大会から半年後には、電気も止められて芝生もはげてしまうなど、多くの大会施設が廃虚となっていることが世界中で報道されています。国立競技場は50億円を生み出す見通しが果たして立つのでしょうか。

 年間50億円を超える利益を継続して生み出せるような興行としてはプロ野球が考えられるものの、野球を使用目的としていないためこれは現実的ではない。また、国立競技場はすでにサッカーやラグビーで使用されたが、五輪後にクラブがホームスタジアムとして活用する予定はなく、このままでは“負の遺産”になりかねない。

 小林 プロ野球球団を誘致しないとすると、屋根で覆って複合集客施設として再デビューさせるしかないでしょう。東京周辺のJリーグ4、5チームとラグビーの試合に国際展示場、コンサートなどフル稼働させるか。そうすると、東京ビッグサイトや東京ドームとかぶりますね。あとになって世界中の経済学者が検証して「またしても…」という論文がたくさん発表されるんでしょうね。

 こうした課題が浮き彫りになっているが、本番に向けては開催方式の簡素化など様々なプランが検討される。新型コロナウイルス禍で海外から観客やアスリートが来日できるかも不透明だ。

 小林(観客は)日本人だけということになるかもしれませんが、それでも、お客さんを入れてできるまで状況が改善されれば御の字でしょう。私も五輪ファンですから、中止にならずに見られることになれば、とてもうれしいです。
 いずれにせよ、延期五輪後の“新国立像”は全く見えていない。

 ☆こばやし・いたる 1968年1月30日生まれ。神奈川・逗子市出身。神奈川県立多摩高を卒業後、一浪して東大に入学。92年ドラフト8位でロッテに入団し、史上3人目の東大出身プロ野球選手となる。退団後、コロンビア大で経営学修士号(MBA)を取得。2005年から14年まで福岡ソフトバンクホークス取締役。現在は桜美林大健康福祉学群教授、大学スポーツ協会(UNIVAS)理事など幅広く活動中。博士(スポーツ科学)。