【どうなる?東京五輪・パラリンピック 緊急連載(27)】世論がこんなところにも…。新型コロナウイルスの猛威が収まらない中で、1年延期した東京五輪に対して「中止」を勧める意見が増えている。そうした声を反映するように、五輪マークをやゆした過激なパロディー画像が続々と出現。特に「五輪中止」を思わせるパロディーTシャツは人気沸騰中で、オンライン販売でひそかなブームだ。すでに大会組織委員会から正式に“クレーム”が入ったようだが、皮肉にも売れ行きは絶好調だという。

 先月中旬、五輪マスコットが「次の就職先」を探すパロディー画像が米国内で出回ったが、日本国内でも風刺の効いた過激な画像がネット上にあふれている。例えば、世界5大陸を表した五輪マーク。5つの輪が「安全な距離」を取って完全に分断されたもの、「2020」の「0」が顕微鏡で見たコロナウイルスに変わり、5つの輪が“濃厚接触”したものなどが存在する。

 実際に市場に流通し、異様な人気を集めているパロディー商品もある。胸の部分に五輪マークとおぼしきデザインがプリントされ、その上から赤字で「中止だ中止」と書かれているTシャツだ。今、多くの有識者が訴える「五輪中止」の世論を反映しており、SNSで拡散されて一気に広まった。

 本紙がTシャツのメーカー「P&M」(東京・武蔵野市)に問い合わせたところ、製造・販売されたのは昨年1月だったことが発覚。同社の菊竹進代表(48)は「日本オリンピック委員会の竹田(恒和)前会長に贈賄疑惑が持ち上がった時、カネでグダグダなら中止を…と思って売り出しました」と話す。デザインのモチーフは1980年代の漫画「AKIRA」。2020年東京五輪開催に反対する若者が壁に「中止だ中止」と落書きしたシーンをヒントに作ったというが、当初の反響はイマイチ。しかし発売から1年が経過すると、コロナ禍によって東京五輪を取り巻く状況がデザインと徐々にシンクロしていった。「延期が騒がれだすとSNSで話題になって売れていきました」。今ではTシャツが未来を予言しているとさえささやかれる。

 昨今、ユニークなパロディーTシャツは若者に大人気。

 今回のTシャツも単なる風刺として作られたが、大会組織委員会からは度重なる“クレーム”が入ったという。そのため同社は五輪マークの一部と「TOKYO」の「T」を削除するなどデザインを工夫。何度も修正して販売できる形に変更した。

 この件について、大会組織委に問い合わせると「個別事案に対する対応についてはお答えしかねます」とした上で「実際の商品や宣伝を確認し、全体として大会のイメージを流用した商品や宣伝広告と言えるかを総合的に判断し、アンブッシュ・マーケティング(便乗商法)に該当する場合には、お控えいただくようお願いしております」と回答した。

 菊竹氏は「本心では五輪を楽しみにしていたので微妙です」と戸惑うが、今後も売り上げが伸びれば「中止論」に拍車をかけるかもしれない。