【パラヒーローズ】パワーリフティング・西崎哲男 “あきらめの悪い男”が挑む2つの夢

2020年03月06日 11時00分

競技中に笑顔を見せる西崎。「心のバリアフリー」の実現に向けても奮闘する日々だ

【東京2020 パラヒーローズ 見据える先に描く夢とは(5)】あきらめの悪い男がいる。パワーリフティングの西崎哲男(42=乃村工芸社)は、パラ陸上選手として夢破れながらも、第2の舞台で東京パラリンピックを目指して奮闘中。なぜここまで努力を続けられるのだろうか。

「東京パラリンピックを目指すと決めたことで、人生が変わった」。体を動かすことが得意で、レスリング部だった高校時代には国体に出場するほどの選手だったが、23歳の時に交通事故で脊髄を損傷。車いす生活を強いられたものの、退院後に通っていた障がい者スポーツセンターのトレーナーに誘われ、パラ陸上を始めた。

 競技生活わずか3年で日本代表に選ばれるなど順調な滑り出しを見せながらも、パラリンピックには出場できないまま、2011年に「娘のために時間をつくろうと思った」と第一線を退いた。

 しかし、13年に東京五輪・パラリンピックの開催が決定した。「ニュースを見て、ぜひ行きたい」と一念発起。「体を動かすことは楽しくできていたので、自分の好きなことを競技にできることが一番かな」と昔からなじみのあったパワーリフティングへの転向を決意し、練習に励んだ。

 鍛錬は実を結び、16年リオデジャネイロパラリンピックでは、念願の舞台に初めて立った。ただ、まさかの記録なしという悔しい結果に終わったことから「(今夏)出場できれば確実に記録を残して、一番大きい大会で自己ベストを出して、応援してくださる方々に胸を張って報告したい」とリベンジに燃えている。

 人一倍熱い思いを持つが、競技面以外にも大きな夢を描いている。それは“心のバリアフリー”の実現だ。海外遠征の際に「周りの人が、困っている姿を見たら自然に助けてくれる」と日本との違いを実感。「小さいときに障がいのある人と一緒に触れ合う機会があれば、そもそも心のバリアーがなくなるんじゃないかな」と小学校など約20か所を訪問。競技体験と講演会を行っている。

 実際に、引っ込み思案のように見えた障がいを持つ子が自ら率先して体験に取り組むようになっただけでなく、その子をクラス全員で応援するようになったという。
 数々の壁を乗り越えたベテランが2つの目標をかなえるため不退転の覚悟で己の道を突っ走る。

 ☆にしざき・てつお 1977年4月26日生まれ。奈良県出身。パラ陸上では思うような結果を残せなかったものの、パラ・パワーリフティング転向後は世界の舞台で活躍。長年、54キロ級で戦ってきたが「東京へはどうしても出なければならない」と、昨年9月からはチャンスがより多い49キロ級に挑んでいる。家族は妻と長女。2人の存在は大きく「疲れたときに笑顔を見ると癒やされる」。165センチ、48・5キロ。