“つなぎ融資の女王”山辺節子被告 罪の清算

2018年04月20日 17時00分

「つなぎ融資の女王」山辺被告

 罪に問われた詐欺とともに“聖子ちゃんカット”やミニスカで昨年話題をさらった“つなぎ融資の女王”山辺節子被告(63)に、熊本地裁は19日、懲役7年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。昨年3月末、タイで身柄拘束され、日本へ移送中の飛行機内で逮捕されたのが1年前のちょうどこの日。これまで被害者10人以上から話を聴き、山辺被告とも接見している元刑事の犯罪ジャーナリスト・小川泰平氏が、渾身の取材を振り返り特別寄稿した。

 熊本の拘置所で3月、山辺被告と2度接見した。留置場や拘置所生活でさぞやつれているかと想像していたが、そんな様子はない。貢いだフィリピンやタイの男性、都内の23歳モデルの話は、笑顔で「フィギュアみたいなもので、遊びですよ」とあっけらかんと話していたが、歌舞伎町のホストの話になると、ボロボロと涙を流していたのが印象的だった。

 身柄拘束時の面影はなく、髪は毛先5センチ程度が黒いだけで、あとは真っ白。逮捕前つけていたカツラは拘置所でNGのため、髪形には違和感があった。“聖子ちゃんカット”で話題になっていた話をすると、「私は黒木瞳さんに憧れてるんです」と即答。被害者たちに「申し訳ないことをした」「悪いと思っている」とは言っていたが、返済、返金に関しては考えてないようだ。

 逮捕当初の警察発表では被害額7億円とされたが、その後の捜査や取り調べで27億円と訂正され、うち山辺被告が手にしたのは4億円。この額について聞くと、本人は「4億円ちょっとくらいです」と答えたが、私の取材だと、山辺被告が手にしたのは約7億円だ。少なくとも20億円が“消えた”ことになる。

 9年前、生活費にも困窮していた山辺被告は、知人に借金を申し込む際、プライドが許さず「30万円投資してみない?」と持ち掛けた。30万円の投資で毎月3万6000円ずつ10か月払うというもの。これがつなぎ融資の始まりで、この投資は1人が2人、2人が4人と口コミで広まり、半年後には数千万円規模になっていた。

 一連の事件は山辺被告が主犯で単独犯ということになっているが、1人で客100人以上から金を集められるわけはなく、山辺被告のすぐ下にいた2組の夫婦の存在が大きい。両夫婦は当初、山辺被告のつなぎ融資の客だったが、いつの間にか客から仲介人になっていた。

 山辺被告によると、彼らが客を連れてくると、投資額の一部をバック。当初は投資額の7%だったが、10%、15%となり、最後は20%を紹介料として支払っていたという。この手口で5年以上、つなぎ融資詐欺を続けていた山辺被告は「破綻するはずはなかった」と振り返った。数々の若い男に金を貢ぎ散財していた山辺被告だが、金は計算して使っていたわけだ。

 だが、結局破綻。仲介人の2夫婦は当初、山辺被告に客を紹介し7~20%の紹介料を手にしていただけだが、いつの間にか客の投資金は山辺被告に行かず、両夫婦のところで止まっていた。山辺被告は客からの金を自転車操業で回していたため、金が入らなくなれば当然破綻するわけだ。

 A夫婦は山辺被告に関わるようになってから、高級外車に乗り、自宅は熊本駅前のタワーマンション、その後は熊本市内の平屋建ての豪邸に住んでいた。還暦のパーティーにはコワモテ俳優Xを呼ぶなど、相当羽振りがよかったようだ。

 B夫婦は1500万円相当の最高級国産車に乗り、7000万円のクルーザーも所有。関東圏の男性はこの夫婦に1億円投資したが、その1億が山辺被告に渡ることはなかった。「一番儲けたのはA夫婦とB夫婦ですよ」と山辺被告は話していた。

 A夫婦の下にいた、元プロ野球選手Yの夫婦も相当の金を集めている。Yは今も某球団スタッフという立場。警察の任意の事情聴取も受け、民事訴訟を受けている。裁判所の和解の提案にも応じず、被害者に返金はしていない。取材すると「私も被害者」と言っていたが、山辺被告はこのY夫婦のことを全く知らなかった。

 B夫婦の下には女子プロゴルファーZの母親がいたが、山辺被告が破綻する前に不信感を抱き、撤退。取材に対しZの母親は「広告塔に使われている気がしてやめました。2000万~3000万円くらい集めましたが、全て返しました」と話していた。

【被害総額は約27億円】判決などによると、山辺被告は2014年9月から15年9月、「元本を保証し、配当金も支払う」などとうそを言い、名古屋市の会社役員ら計12人から計約1億7700万円をだまし取った(警察に寄せられた被害総額は約27億円)。

 山辺被告は経営危機に陥った有名企業の実名を挙げて、金融機関から融資が行われるまでの「つなぎ融資」をすれば高利が得られるとだましていた。そのため「つなぎ融資の女王」との異名がつけられたという。