最近は腸の不調を訴える人が増えているという。腸内環境はどのように整えればいいのだろうか。「血糖値は『腸』で下がる」(森豊氏との共著・青春出版社刊)を著し、現在までに5万人以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸のエキスパートでもある松生恒夫医学博士に、食生活の整え方などを中心に聞いた。

 ――先生は「腸の不調を抱える人は圧倒的に食物繊維の摂取量が少ない」と指摘されています。そもそも一日にどれぐらい必要なのでしょうか

 松生恒夫医師(以下松生)18~49歳の女性で20~21グラム、男性で26~27グラムとされています。食物繊維に関しては種類の違い、効果的な取り方についても知っておいていただきたいですね。

 ――種類とは

 松生 食物繊維には大きく分けて2つの種類があります。まず水に溶けない不溶性食物繊維、これは穀類やいも類、豆、根菜類に多く含まれます。特徴としては胃や腸で水分を吸収して膨らむため、腸を刺激してぜん動運動を活発にして排便を促します。ほかにも、かみ応えがあるものが多いため、必然的によくかむことになり、満腹中枢を刺激し、食べすぎを防いだりといった効果も期待できます。

 ――もう一つは

 松生 水に溶ける水溶性食物繊維です。リンゴやキウイフルーツなどに含まれるペクチン、ワカメやモズクなどの海藻類に含まれるアルギン酸、こんにゃくなどのグルコマンナンが代表的なものとなります。特徴としては、ゆっくり消化吸収されるため、腹持ちがよくなります。便と一緒にコレステロール排出も行うため、コレステロール値の増加を抑制する効果も。大腸の環境も良くなります。

 ――その2つを同じぐらいずつ取ればいいのでしょうか

 松生 私が長年多くの患者さんを診てきた経験から導き出されたバランスは、不溶性と水溶性を2対1。この割合で取ると比較的理想的なバランスになると感じています。あくまでどちらか一方だけでいいというワケではありません。

 ――改めて、一日の食事をどのように組み立てるべきでしょう

 松生 まず朝食に関しては朝の大ぜん動(腸の内容物を肛門に送り出す動き、朝の排便を促す意味で大事な強い収縮運動)を促すためにもしっかり取ってもらいたいです。最近はスーパー大麦といわれる食物繊維が豊富な食材も出ているのでこれを活用した大麦ごはんなどを中心に、不溶性食物繊維のいもや根菜類を含むみそ汁、また水溶性のリンゴやキウイフルーツを添えてもいいでしょう。洋食であれば、ライ麦パン、または玄米フレークなども食物繊維が豊富です。

 ――ランチはコンビニ食で簡単に済ませる方も多いです。そういった人は…

 松生 私がオススメしているのはコンビニパスタの量を半分に減らして、白滝をまぜるというもの。こうすると総カロリーを減らした上で必要な水溶性食物繊維を取ることができ、一石二鳥です。また最近は夏場でもおでんを取り扱っているところもあります。おでんにはこんにゃく、白滝など手軽に取れる水溶性食物繊維を含む食品が多いとあって、うまく活用してもらいたいです。

 ――夕食はいかがでしょうか

 松生 大事なのは夕食をビッグミール(大食い、ドカ食い)にしないことです。夜間の腸の運動に関係しているホルモンにモチリンというものがあります。モチリンは夜間の空腹時など胃が空になると放出され、消化管内をきれいに掃除し、次の食事への準備をします。これには夜寝るときに胃が空っぽになっていることが必要。夜ごはんはしっかり食べたい人は多いでしょうが、腸内環境を整えるためには、できれば早い時間帯に野菜スープなどの軽食がオススメです。今回お伝えしたことを腸内環境の改善に役立てていただければと思います。

 ☆まついけ・つねお 1955年、東京生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て2004年、東京都立川市に松生クリニックを開業。医学博士。現在までに5万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸のエキスパート。「『腸の老化』を止める食事術」(青春出版社刊)、「ビートルズとストレスマネジメント」(春陽堂書店)など著書多数。