安倍晋三元首相の銃撃事件で13日、奈良県警は奈良市の現場を検証し、近くで弾丸とみられる金属片を複数確認した。山上徹也容疑者(41)の犯行動機について、旧統一教会の代表が設立した国際NGOに焦点が集まっている。その名も「Universal Peace Federation(天宙平和連合)」(以下、UPF)。昨年9月、同団体が主催するイベントに、安倍元首相がメッセージ動画を送ったため、山上容疑者は犯行を決意したという。いったい安倍元首相とはどんな関係なのか。“疑惑の団体”を直撃すると――。

「今日に至るまでUPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します」

 安倍氏は、昨年9月にUPF―Internationalが主催した集会「シンクタンク2022 希望前進大会」でそんな動画メッセージを送った。山上容疑者は、これまでの警察の取り調べに対し「宗教団体の代表らが設立したNGOの集会に寄せられた安倍元首相のメッセージを見たころに殺害を決意した」と供述しているが、まさにこの動画が引き金になったというわけだ。

「山上容疑者の母が旧統一教会に多額の献金をしたことで一家は破産。人生が暗転する中、統一教会の友好団体とされるUPFに登場した安倍元首相に恨みを募らせたとみられています」(捜査関係者)

 UPFは、宗教法人・世界平和統一家庭連合(旧名・世界基督教統一神霊協会、以下旧統一教会)を設立した文鮮明氏が、妻の韓鶴子氏と創設した国際NGO団体のこと。家庭連合の田中富広会長によると、両団体は別のミッションを持った友好団体だという。

 何とも紛らわしいが、仮に別団体だとしても一国の総理大臣経験者が、特定の宗教団体と友好関係にあるNGOにメッセージを送るのは誤解を招きかねないのではないか。

 そこでUPF―Japanに、今回の安倍氏が動画メッセージを送った経緯について質問状を送った。すると「当該宗教法人と弊団体がその活動と目的において別団体であること」を強調した上で、魚谷俊輔事務総長の名で次のような回答があった。

「UPF―Internationalおよびその友好団体であるワシントン・タイムズ財団から安倍元首相にビデオメッセージの依頼があり、盟友である米国トランプ大統領がビデオメッセージを送られることを伝え聞いて承諾されたと聞いています」

 そもそも安倍氏がUPFに協力したのは今回が初めてではないという。

 魚谷事務総長によると、2006年5月に福岡で行われた「天宙平和連合祖国郷土還元日本大会」と、今年2月に韓国で行われた「ワールドサミット2022」にも祝電を送っているというのだ。

 それほど協力しているとすれば、当然見返りを求めるのではないかと疑ってしまう。

 そこで安倍氏や自民党に対し、選挙協力をしてきたか問いただすと「弊団体が安倍元首相あるいは自民党の政治活動に対し、協力をしたことはありません」とキッパリ否定。ということは、安倍氏はUPFの考えに純粋に共鳴して協力したということなのだろうか…。

 最後に「今回の安倍晋三元首相の銃撃事件をどのように受け止めているか」については次のようにコメントした。

「弊団体のイベントに安倍元首相がビデオメッセージを寄せたことが、山上容疑者の犯行動機となったということは、それが事実であれば常識的には考えられないことですが、遺憾であります。いかなる動機であれ、犯行を正当化することはできないと考えます」
 
 事件の真相究明が待たれる。