ウクライナ戦争で国内“場外戦”勃発!? ウクライナからの戦争難民が安住の地を求めて日本に入国しているが、連れてきたペットの犬5匹をめぐって国内で論争になっている。農水省が18日に狂犬病の検疫手続きを特例で緩和すると発表したことに端を発するこの問題は、狂犬病の恐ろしさを知れば知るほど無視できそうにない――。
ポーランドなどを経由して日本に入国したウクライナ難民のペットの犬や猫に対して、農水省が検疫を特例で緩和すると発表したことで、「特例賛成派」と「特例反対派」の論争が起きている。
きっかけはウクライナ難民の女性が、愛犬のポメラニアンが狂犬病予防法に基づき動物検疫所で最長180日間の待機期間を強いられている上に1日3000円の係留費用がかかると報じられたことだった。
この報道を受けて特例賛成派は「命からがら逃げてきたのに日本についた途端、家族のワンちゃんを強制的に引き離すとは非情にもほどがある」など、情に訴える論を展開。一方で特例反対派は「日本は苦労して数少ない狂犬病の清浄国になったのに先人の苦労を無駄にするのか?」「特例措置の結果、もし狂犬病が国内侵入したら、多くの野生動物の命が失われるって分かっているの?」との反論を展開した。
狂犬病は人や犬、猫を含むすべての哺乳類で感染・発症する病気で、主な宿主は犬。かまれると唾液を介して患部から体内に侵入し、ウイルスが神経系を通じて脳に達して発症すると致死率ほぼ100%という恐ろしい病気だ。水を極端に恐れ、狂騒状態に陥る。潜伏期間は10日から180日と長期だが、患部が脳に近いほど発症までの期間は短くなる。まれに数年かかって発症することもあるというが、発症前にワクチンを接種すれば助かる。
こうした情報が広がると、19日にはツイッターで「致死率100%」というワードがトレンド入り。多くの獣医師や生物関係者もウクライナ難民のペットに対する特例措置に反対の声を上げた。
日本獣医師会は今回の特例措置をどう見ているのか? 副会長兼専務理事の境政人氏に話を聞くと――。
「農水省から説明を受けたが、多くの人が勘違いをしている可能性がある。ウクライナ難民のペットの検疫を短縮したわけではなく、狂犬病ワクチンの2回接種やマイクロチップの埋め込みなど必要な措置が講じられていることを条件に、課される検疫期間を飼い主による隔離飼育に切り替えたということ。期間中は健康観察などの報告を義務づけるもので、フリーで入ってくるわけではない」
今回、来日ウクライナ難民が帯同した犬は4匹が2回ワクチンを接種、残る1匹も1回接種を済ませているというが、中には適正な抗体価が確認できない個体もいたという。隔離飼育の環境によっては、意図せず野生下の動物と接触する可能性もあるが大丈夫なのか?
ある獣医師はこう明かす。「隔離飼育といっても、どこまで徹底できるか。5頭の中に狂犬病に感染している犬がいて、その犬が野生動物と接触して感染させてしまった場合は悲劇が起こる。発症した個体が確認された場合、発生源を中心に近隣エリアの野生動物の調査が行われ、感染を確認したら次々に捕獲して殺処分することになる。今回の特例措置は万が一、狂犬病が国内に侵入してしまった場合のリスクが大きすぎる」
日本は1957年以降、狂犬病の発生は確認されておらず、数少ない狂犬病清浄国だ。同じく台湾も約50年間、狂犬病は発生していなかったが、2013年に突然、野生動物のイタチアナグマが発症。かまれた犬が発症して死んだほか、人にもかみつく事例が発生した。何らかの理由で狂犬病が持ち込まれた可能性がある。
今後もウクライナ難民はペットとともに日本に入国するだろう。このままペット検疫の特例措置を続けていいのか、冷静な議論が必要かもしれない。












