2021年はコロナにより飲食店は営業自粛を余儀なくされ、倒産件数もうなぎ上りだった。その余波がいまだ続く中、22年の飲食業界はどうなるのか? 著書「『至極』のラーメンを科学する」を著した食のテクノロジーに詳しい川口友万氏によると今年は欧米で流行しているフードテックの波が本格的に日本にも上陸するという。

 川口氏は「フードテックは科学技術で食品や料理を定義し直そうという、新しい産業分野です。例えば、菜食主義者向けのハンバーガーを作る場合、これまでは牛肉のミンチを大豆で代用してきました。フードテック企業のインポッシブル・フーズが作ったハンバーガーのパティは牛肉の構造を分析し、その構造を植物性の材料で再構成しています。肉汁まで再現し、見た目も味も牛肉のパティそのもの。アメリカでは爆発的に株価が上昇し、同社は2011年に創業した若い企業ですが、株式総額は軽く1兆円を超えています」と語る。

 ビッグなビジネスチャンスが日本にも来るのか? しかし、川口氏は日本の場合、ハンバーガーではなくラーメンからその波は始まると予想している。

「最近は環境問題が食の分野にも及んでいますが、その結果、野菜だけで作られたヴィーガンラーメンや昆虫のコオロギでダシをとったラーメンが登場しています。これがどれも非常においしい。これまではあくまで代用品のイメージでしたが、劇的に味が向上しています」

“家系”や“二郎系”の次のラーメンはまさかの野菜系や虫系? さらにフードテックは食と人の関わり方を変えるかもしれない。

「食べ物に電気を流す、あるいは舌に電気を流すことで味が変わることが分かっています。牛肉や鶏肉に電流を流すと、わずかな時間で数週間も熟成させた肉と同じ味になる。電気が熟成を促進させるわけです。スプーンやフォークに電流を流しながら食事をすると、塩味を感じたり、うま味が増したりする。これを電気味覚といい、東京大学などで研究が進んでいます」(同)

 バーチャルリアリティー技術で映像や人工的な香りと組み合わせ、現実には“ない”味を錯覚させたり、3Dプリンターを使って特殊な食感やデコレーションの食べ物を作ることもビジネス化まであと一歩だという。

「調理器具とインターネットの融合も進んでいます。欧米では冷蔵庫の中身からできるメニューを提案、あるいはメニューから必要な食材をオンラインで自動発注するといった仕組みができつつあります。スマートウオッチなどから健康情報を取得して、個人に合ったメニューを提案する、食のパーソナライズも進むでしょう」

 飲食店の起死回生はフードテックにあり! 2022年はテクノロジーが新たな食ビジネスの幕を開けるのだ。