米国すでに“隠れコロナ”多数説 保健福祉省が突然ウイルス検査発表の裏

2020年02月19日 16時00分

「ダイヤモンド・プリンセス」からの米国人退避者を乗せたチャーター機で検温に当たる関係者(乗客のフィリップ・コーター氏夫妻提供=ロイター)

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での新型コロナウイルスの集団感染をめぐり、米メディアは日本政府の対応を「こうしてはいけないと教科書に載る見本だ!」などと痛烈に批判し、同船から米国人328人を下船させ、帰国させた。だが、その米国の保健福祉省はここにきて“インフルエンザのような症状”の人に「コロナウイルスの感染検査をする」と突然発表した。いよいよ日本を非難している場合ではなくなった。

 米保健福祉省直轄の米国疾病対策センター(CDC)は先週末、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコとシアトルの全米5都市を対象に「インフル検査で陰性だったが、発熱などインフルに似た症状のある患者」に限り、新型コロナウイルス検査を実施すると緊急発表した。

 米NBCニュースは、この措置について「米国がこの疾患の監視を広めることを意味する」と報道。だが、一部の医療関係者は「インフル感染者の中に、かなりの新型コロナ感染者が交じっているのではないか? CDC自体うすうす気づいている」と推測している。

 というのも、全米で同ウイルス検査が行われたのは、先週の時点でわずか443人(うち陽性は15人)。それ以外については「インフルとしていたが、実は新型コロナだったケースもある」という可能性を完全否定できないのだ。

 米国では医療費が高額なために検査を受けられず、症状から自己判断でインフルと決めつけ、自宅療養する患者も多いという。そういう患者も今季米国で発生したインフル感染者数2600万人に含まれているのだ。

 CDCによると、米国でのインフルによる死者数はここ数年、毎年1万人を超え、最悪だった2017~18年シーズンには4500万人が感染し、6万1000人が死亡。この冬も死者はすでに約1万4000人にのぼる。ちなみに厚生労働省によると、日本でのインフルによる死者数は18年が3325人だった。

 米国の疫病の権威で米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は17日、米紙USAトゥデーに「(米国で)新型コロナウイルスに感染する危険性は現段階では極めて低い」と強調した。

 だが、今回のCDCによる大幅な新型コロナの検査対象拡大は、専門家の中にも感染者数が急増する可能性が高いとの見方が少なくないことを示している。

 米国を訪れる中国人旅行者は年間300万人(18年)。武漢を中心に中国で新型コロナが流行し始めたとされる昨年12月はもちろん、米政府が中国からの入国規制を実施する前の1月にも、多くの中国人旅行者が全米各地を訪れていた。日本同様、そこで感染が広がっていたとしても何も不思議ではないのだ。

 なお、世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は18日、クルーズ船の乗客乗員を船内で2週間待機させた日本政府の措置について「世界中に乗客が散らばってしまうよりは明らかに好ましかった」と述べ、当初の日本の判断は適切だったと評価した。

 ただし、感染者が増え続けるなど状況が悪化したことについては「残念だった」と言及。「船やホテルでは、ウイルスの感染拡大がより効率的に起きてしまう環境になることもある」と指摘した。また日本政府や、乗客らの帰国先の各国当局に対し、今後も経過観察などで適切な配慮がされるよう求めた。