116期生の中では最多となる3Vを誇る実力者・久米詩(20=116期・静岡)。父は元選手で京都出身の“はんなり系”が、ここまでの道のり、現状を語ってくれた。

 現在、日本競輪選手養成所の教官でS級で長く活躍した久米康徳氏(京都・70期)が父親の2世レーサーだが「ずっと硬式テニスをやっていた」ため、アマチュア時代の自転車競技の経験は皆無。それでも、彼女は競輪の世界へと導かれる。「選手を目指したのは高校3年の時。大学進学の予定だったけどオープンキャンパスに行っても何だか学生生活のイメージが湧かなくて…。やりたいことも決まらずに迷っていた時、父親が競輪選手をやっていたのもあったし違うスポーツをやってみよう」と一念発起。「適性試験で合格したけど、数値も高くなくて、タイムも出なかった」と不安だらけだったが、いざデビューすると父から受け継いだDNAが覚醒する。昨年10月大宮で初Vを飾ると、同期でトップの3回の優勝と勝負強さを発揮。「学校の時から考えたら優勝できるレベルではなかったがデビュー年に優勝できたのは大きかった」と自信を深めている。

 売りはスタート力だ。内枠が位置取りに圧倒的有利といわれるガールズだが、久米は外枠でもお構いなし。号砲と同時に勢いよく飛び出して前めのポジションをキープする。「レーススタイルを決めた方がいいかなというのもあったし、枠番は自分で決められるものではないですしね。スタートで有利に立ち回れるひとつの武器だと思う」と語るように、必勝パターンを持つことで、経験不足をカバーしている。康徳氏が選手引退後、養成所の教官となったため家族で伊豆に移住し「養成所に行けばバンクもあるし、体育館ではウエートの施設も使えるんです」と、抜群の練習環境に身を置いているのも強みといえそうだ。

 デビュー2年未満の選手で争われる「フレッシュクイーン」(西武園・4月19日)出場が当面の目標だ。「ギリギリ出られると思うんですが…。同期の存在も刺激になりますしね」。まだまだ伸びシロたっぷりの20歳の今後に注目したい。 

 ――休みの日は

 久米 今は家族で一緒に住んでいて父が土日に養成所の当直がなくてオフが重なったりしたら一緒にご飯に行ったりします。私の方が融通が利くし。

 ――遊んだりしないの

 久米 地元じゃないし、友達も近くにいない。一番キツいのはそこですかね。こないだ、成人式で久しぶりに地元に帰ったら楽しすぎて(笑い)。帰ってきた時の格差が…。

 ――仲のいい人は

 久米(鈴木)奈央さんとは一緒に練習をすることが多いですね。そういえば、こないだ奈央さんは、バレンタインのチョコのラベルを自分で作って、みんなに配ってましたよ。私も女子力を見習わないとです!

☆くめ・うた=1999年9月3日、京都生まれ。2019年7月に奈良競輪場で静岡所属の116期生としてデビュー。