新型コロナウイルスの影響で、鉄道界でも前代未聞のことが起きました。5月6日に廃止となることが決まっていた、JR北海道・札沼線(さっしょうせん)の一部区間である北海道医療大学~新十津川間が、突然前倒しとなって、今月17日にラストランを迎えてしまったんです。普通なら、最後の運行を見ようと前々から予定を組んでいた人から苦情が殺到してもおかしくありませんが、今回の決定には多くの鉄道ファンが賛同する結果となりました。

 実は札沼線のラストランの日は、2度も変更されたんです。当初はゴールデンウイーク最終日の5月6日を予定していましたが、新型コロナの影響が大きくなってきたため今月15日、「定期列車の廃止を24日、地元の利用客のみを乗せて走る列車を27日に早める」と発表されました。

 この発表の時点で、東京など7都府県に緊急事態宣言が発令されていたので、鉄道ファンも「仕方ないよね」という気持ちになりました。しかし発表の翌16日、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されたうえ、北海道も特定警戒都道府県に指定されたため、地元客向けの列車運行は中止に。さらに定期列車の廃止は、翌17日に繰り上げることが発表されたんです。

 しかもこの決定は、16日の午後8時に発表されました。そんな時間に言われてしまうと、遠方の鉄道ファンは飛行機で向かってもお見送りをすることができません。実は新十津川駅は“日本一終電が早い駅”で、ラストランが発車するのは午前10時! 朝イチの飛行機に乗って向かっても、たどり着くことは不可能なんです。もちろんこんな状況下では、ファンといえども、飛行機で駆けつけるのはおススメできませんが…。

 でもこのJR北海道の決断に対し、鉄道ファンから文句は出ませんでした。逆に「人が殺到して感染拡大を防ぐことができて良かった」「見事な封じ込め作戦だ!」と、多くの支持が集まる結果となりました。

 ここで木村ポイント! 16日夜の発表を受け、翌日には北海道テレビが「緊急生配信!最終運行をヘリコプターの映像で生配信します!」と題し、ユーチューブで空撮映像を流してくれたんです。これには鉄道ファン以外の人も大絶賛。北海道の広大な畑の中を、ゆっくりコトコトと列車が走って行きます。ラストランとなると多くの鉄道ファンが詰めかけ、現場は殺伐とした空気になることも少なくありません。でも今回は、そんなことは一切なく、穏やかな気持ちで最終列車を見送ることができました。

 この映像は今でもユーチューブで見ることができます。それでは、最後の雄姿を自宅で見ながら札沼線の旅気分へ、出発進行~!

☆きむら・ゆうこ=1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。