先日、就職情報を提供する「マイナビ」が「<第1>大東亜以下⑨」というタイトルのメールを大学生に送ったことが発覚し、「学歴フィルターではないのか」と物議を醸した。ちなみに「大東亜」は大東文化大、東海大、亜細亜大を指すことが多い。日本独特と思われる“学歴フィルター”だが、実はお隣の中国にもあるようだ。

 今月上旬にメールを受信した人物がツイッターで「大東亜以下って露骨に学歴フィルターかかってて草」とつぶやいたことで、ネット上で炎上していた。学歴フィルターとは、採用過程において学歴でふるいにかけられる仕組みを指す。

 同社広報は取材に対して、タイトルの貼り付けにミスがあったと説明。「企業は採用の際、学歴だけで人物を評価することはありません。勤務地、希望職種など、複合的な理由で採用選考しており、学歴だけで学生を選別することはありません」と、学歴フィルターがあるとの指摘を否定した。本当に学歴フィルターはないのか? 企業で人事担当をしたことのある男性会社員は「新卒向けの案内を出す際に多くの就職支援サイトと打ち合わせをしました。某サイト担当者からは『早慶が欲しいですか。日東駒専を下限にしますか』と案内の対象を大学ごとに分けられるとハッキリ伝えられました。学歴フィルターの存在は以前からささやかれている、暗黙の了解みたいなもの。むしろオープンにした方が企業も学生も無駄な労力を使わなくていいのでは」と主張している。

 こうした学歴フィルターは中国にもあるという。中国の4年制大学は約1200校で、そのうち約800校は国立・公立大学、約400校は私立大学だ。

 ユーチューブチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」で日中の情報を発信している中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。

「中国でよく使われる大学群には『211』や『985』などの名称がよく使われています。211とは、中国政府が優秀な人材の育成を目的に、特に重点的に投資を行っていくと定めた中国国内の112校で、『21世紀の約100校』を対象としていることから、211と呼ばれているのです」

 211には、北京大学や清華大学など、難易度が高い112校が含まれている。

 周氏は「さらに、この211の中から、世界一流大学として研究レベルを向上させようと中国政府が選抜したのが39のトップ大学で、1998年5月からプロジェクトが開始されたことから、『985』と呼ばれています」と言う。それらの大学群が学歴フィルターとなったようだ。数年前の中国では、企業などが就活生に提示する採用条件に211や985の在学生であることを明記する場合が非常に多く、学歴差別であるとして問題となっていた。

「出身大学のレベルによって、就業機会が平等に与えられないことは中国でも問題とされました。そこで2013年に中国教育部は企業などに対し、学歴フィルターを撤廃するように求めた。現在、学歴フィルターは存在しないことになっています。しかし、日本同様、水面下では多くの企業が積極的に211出身の学生を採用しているのが現状なのです」(周氏)

 日本も中国も“本音と建前”がまかり通っているようだ。