原発メーカーと闘ったロック弁護士・島キクジロウ 原告団を作ったとき忠告された「殺される」

2019年09月13日 11時00分

異色のロック弁護士・島

 規格外の“ロック弁護士”が大暴れしている。今月4日に2枚目のアルバム「KNOW YOUR RIGHTS」をリリースしたロックバンド「島キクジロウ&NO NUKES RIGHTS」のギター&ボーカル島キクジロウ(56)こそ、原発メーカー訴訟で約4200人の原告団の団長を務めた島昭宏弁護士だ。ミュージシャンと弁護士の二足のワラジをはく島が、本紙に波乱の半生と生きざまを激白した。

 ――新アルバムは憲法をテーマにした曲などメッセージ性が強烈だ

 島:このバンドでやる曲はすべて原発、沖縄、憲法、パレスチナとかだからね(笑い)。

 ――なぜこのバンドを

 島:バンド名にある「ノーニュークス権」という人権を広く根付かせたかった。これは、原子力の恐怖から免れて生きる権利のこと。憲法にはないけど、そういう保障を受けるべき時代なんだ。今でも放射能汚染から逃れた避難者がいるわけだから。音楽を通せば若者を巻き込めるし。

 ――ミュージシャンの弁護士は珍しい

 島:自分では“ロック弁護士”“ロックンローヤー”と言っているけど、反体制という意味では変わらないと思ってる。

 ――いつからバンド活動を

 島:始めたのは16歳の時。ビートルズを聴いてたんだけど、小学6年の時に岡林信康が部落問題を歌った「手紙」という曲に衝撃を受けてさ。そのうちクラッシュに出合って、音楽をやりたいと思った。そんなとき、有吉佐和子の「複合汚染」という本を読んで「環境問題を一生涯のテーマに歌っていこう」と決めたの。物質的な豊かさばかりを追い求める今の価値観を転換しなきゃと。

 ――それが今につながっている、と

 島:そういうこと。

 ――なぜ弁護士に

 島:41歳の誕生日に2つのことに気づいたんだ。まだもう1つ別の人生が送れるな、と。そしてもう1つは、社会をひっくり返すために音楽始めたのに、売れないバンドやっていても1ミリもひっくり返らないなと(笑い)。そういう意味で弁護士は、ダイレクトに社会にコミットできるから。

 ――弁護士になったのが48歳。かなり遅咲きだ

 島:最初から勉強しながら実務の研修も並行してこなしたよ。そのうち東日本大震災があって原発問題があった。2014年1月、原発メーカーのゼネラル・エレクトリック(GE)、日立、東芝を相手に訴訟を起こした。4200人の原告団つくったよ。周囲からは「殺されるよ」と忠告されたけどさ(笑い)。

 ――結果的に棄却されたが

 島:必ずしも判決が重要ではなく、その過程も見てほしい。我々は法律論で圧倒したわけだから。いずれ本にしますよ。

 ――今も係争中の案件を抱えている

 島:裁判になっているのが20数件、なっていないもので40数件ある。

 ――弁護士がロックやっていたら偏見で見る人もいるのでは

 島:そりゃ、いるだろうね。でも関係ないよ。

 ――最後に好きな言葉を

 島:「夢はかなわなくてもいい。そこへ本気で向かう一歩一歩にこそ本当の喜びと価値があるから」かな。

☆しま・きくじろう 本名・島昭宏。1962年11月11日生まれ。愛知・名古屋市出身。高校時代からバンド活動開始。86年早稲田大学政経学部卒業。精力的にライブを行い、CDを多数リリース。2005年駒沢大学法科大学院入学。09年司法試験合格。12年にアーライツ法律事務所開設。原発事故発生時、原発メーカーは責任を免除される原子力損害賠償法が違憲として、14年1月、原発メーカーの賠償責任を問い、東京地裁に提訴。1審判決は請求棄却(一部却下)、2審判決も棄却。今年1月、最高裁は上告を棄却し、控訴審判決が確定。現在全国ツアー中(11月24日まで)。