「フラットウッズ・モンスター」は、日本では「3メートルの宇宙人」という異名でも知られている。ちなみに、米国では「10フィートモンスター」と呼ばれている。昭和のオカルト子供本には必ず掲載されており、かくいう筆者もトラウマになった記憶がある。

 正体は不明なままで、宇宙人本にも、UMA本にも収録されている怪物である。

 身長は3メートル超でロボットのような四角いボディーを持ち、体は緑色っぽく、真っ赤な顔に、スペード型か修道女の制服のような形の被り物を被っていた。巨大な目は青みを帯びながらオレンジ色に輝き、「シューッ」という奇妙な音を立てて、鋭いカギ爪のある指をしていた。また、腰から下は襞のある緑の衣服を着ていたとされる。

 この怪物の出現事件により、ウエストバージニア州ブラクストン郡フラットウッズという人口数百人の田舎町は、全米から注目され数千人の見物客が押し寄せるパニックとなった。

 事件の発端は1952年9月12日午後に遡る。燃えさかる飛行物体が空を横切り、エルク川沿いのガサウェイの町付近に落下した。午後7時15分ごろ、学校の校庭で遊んでいたエディ・メイ(13)とフレッド・メイ(12)の兄弟は、フィッシャー氏の所有地の丘の上にこの物体が着陸する様子を目撃、自分の母親に報告した。

 メイ兄弟と母親は近所の子供たち、ネイル・ナンレイ(14)、ロニー・シェイバー(10)、トミー・ハイヤー(10)、ウェストバージニア州兵のユージーン・レモン(17)の4人に声を掛け、計7人で、レモンの犬一匹を連れて現場のフィッシャー氏の農場に向かった。

 近づくと、丘の頂上右手15メートルほどの場所に、直径約5メートル、高さ約1・8メートルの火の玉のような巨大な物体が燃えていた。付近には刺激臭のある霧が立ちこめていた。そんな中、闇の中に動めく物体に気が付いたので、ライトを向けてみた。そこに姿を現したのがこのフラットウッズ・モンスターだったのである。

 パニックになったレモンは一番に逃走、一同はパニックになって逃げ出したが、刺激臭のある霧を吸ったためだろうか、激しい鼻の痛みや、ひどいのどの腫れに長い間悩まされたという。この騒動を聞いた現場近くに住むマックス・ロッカード氏が愛車で現場に急行したが、怪物や光る物体も姿を消していた。警察も何も発見できなかった。

 翌日の9月13日、この事件の噂が一帯に広まる。地元の新聞社に勤める記者が現場を訪問したところ、スキーで滑った跡のような2本の溝とオイルのような液体を確認している。だが、この2本の溝はマックス・ロッカード氏の愛車のタイヤ痕だった。

 9月14日、この事件が新聞報道され、9月19日にはニューヨークのテレビショー「ウイ・ザ・ピープル」という番組にメイ兄弟の母親が出演する。この際に描かれたイラストが、「3メートル宇宙人」の有名なビジュアルを形づくった。後に、超常現象研究家の・グレイ・ベイカー氏がイラストを現場の背景と合成、あの衝撃写真が誕生したわけだ。

 このビジュアルの幻想は1990年、ジャーナリストのフランク・C・フェシーノ・ジュニア氏の現場再調査により打ち破られた。実際のビジュアルは、四角い体に赤く光る目玉のようなものがついているだけで、どちらかというとロボットのような雰囲気であったという。

 この事件に関しては、超常現象調査団体サイコップ(CSICOP)のジョー・ニッケルなど多くの人が検証している。まず少年たちが目撃した光る飛行物体だが、その日時、大型の流星が観測されており、隕石の落下の誤認説が唱えられている。

 また目撃者が見た怪物の赤く輝く目は、現場から見える航空障害灯か、木の枝に止まったメンフクロウではないかと推測されている。目撃者が感じた異臭は草の匂いであり、体調が悪くなったのは集団ヒステリーや恐怖からくるストレスによるものだと言われている。

 この巨大な怪物は果たして、単なる妄想・幻覚であったのか、それとも何らかの生命体が存在したのか…。