【平岡洋二 連載コラム】修行のようでは真の指導とは言えないのでは…

2020年09月29日 11時00分

高校野球の聖地・甲子園。この地に立つために何が必要なのだろうか

【平岡洋二「アスリートの解体書」(26)】高校野球部独特の雰囲気に驚かされることがある。まず「この野球部の目標は?」と聞くと大半のチームが「甲子園出場です」と答える。中には「日本一になることです」なんて答えもあるから驚きだ。甲子園出場はおろか、地区大会の序盤で負け続けているのに…。高い目標にチャレンジする姿勢を批判する気はさらさらないが、洗脳された新興宗教を思い起こさせる異常な雰囲気のチームにはあえて次のように問いかけることにしている。「強豪校と言われる学校との違いを客観的に分析してみよう」と。

 まずハード面。専用どころか球場すら備えた学校さえある。雨天練習場を始めピッチングマシンやその他もろもろの用具類も充実し、立派な寮完備のプロ野球顔負けの設備の学校すらあるのが現実だ。

 次にソフト面。強豪校と言われる私学は、特待生制度等を活用して近隣だけでなく県外からも有望選手を集め、部員数も100人を超え激しく競争させてチームをつくる。何度もの甲子園出場などの実績のある指導者やコーチを雇い入れている場合さえある。もろもろ考慮すると、差が縮まるどころかますます実力差が開くのでは?と。すると、今度は「気持ち・根性では負けません」。

 中学時に「アスリート」でのトレーニングを経験し、過去全国制覇さえある強豪校に進学、3年の夏の予選が終わり今度は大学野球部に進むためにトレーニングを再開。何と、中学生時よりひと回り小さな体で現れたのだ。休みは年末年始の数日のみで、連日の夜までの猛練習に加えて朝練。睡眠時間は5時間前後だったという。10代の成長期の高校生に睡眠時間を削らせてまでやらせる必要のある練習などあるのだろうか。結果は言うまでもなく早々に敗退して高校野球終了。また、一緒にトレーニングを始めた同級生がいた。190センチ近い身長で体重60キロ台の異様に細長い体つき。素材的には背が高く、俊足・強肩なのだから、関東などの強豪大学などからの勧誘がありそうなタイプだったが、決してレベルの高いとは言えない地元大学ヘ進学。4年間のトレーニング等で体重を20キロ以上も増やしてプロ注目の存在になった。

 ただ練習量を競い、野球に必要なパワーなどの要素をそぎ落とすようなやり方ではなく、求めるパフォーマンスにふさわしい体づくりをウエートトレーニングという手段を使ってやり、体づくりに必要かつ運動量に見合った栄養や休養にも配意するという取り組みは強豪校と言われるチームでもほとんどが正しくはなされていない。勝利や進歩などの成功体験なしの、難行苦行の修行のような高校野球では真の指導とは言えないのではないだろうか。

 指導者のみなさん、アプローチの仕方を変えてみませんか?

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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