【平岡洋二 連載コラム】丸が金本の「アスリート記録」を超えた瞬間

2020年09月04日 11時00分

スクワット180キロ10回を達成した丸はメモに「5年越しの夢達成」と書き込んだ

【平岡洋二「アスリートの解体書」(15)】2017、18年と2年連続でセ・リーグMVPを獲得。「アスリートメンバー」として前年の新井貴浩(広島)に続いて3年連続、通算7人目(2年連続は初)の栄誉であり喜ばしい限りだ。巨人・丸佳浩といえば、真っ先に思い出されるのは、広島入団2年目のシーズンが終了した09年11月のやりとりだ。

 1年目のシーズンを終えた前年のオフに「アスリートメンバー」入り。「たまには休みを入れたら? 故障の原因にもなりかねない」と、アドバイスをするほど連日熱心に通い詰め、高卒2年目とは思えない超人的な筋力数値を示し、体重3キロ増の87キロでキャンプイン。私もあらゆる機会に「カープの丸」をアピールするなど飛躍を期待したものだった。

 しかし、キャンプを終えシーズンインするとみるみる体重(筋量)を落とし、11キロ減の76キロでシーズン終了。当然、大幅な筋力ダウンを伴い成績もさっぱり。「何と自覚のないことか。パフォーマンスの源となる身体のことを少しは考えろ」と、強く叱責した。

 今ではいい思い出話となっているが、これが身体のコンディショニングへの意識向上へのきっかけになったのだから、結果的にはいい教訓となった。そして5年目オフ、私の日記に「…10年以上もアスリート記録だった金本のスクワット記録を更新した。その日の記録用紙には、自ら『5年越しの夢達成!!』と書き入れていることからも分かるように、プロ入り以来最も充実したオフだったと言えよう。筋力・体重・体重比・垂直跳びなどすべての項目で過去最高値。入籍、第1子誕生とプライベートの充実がそのまま反映している。例年、シーズン中のコンディションが不安要素だったが、家庭を持ったことで心配なさそう。レギュラー奪取のチャンス…」と書きつづっている。

 その13年シーズン終了時の体重は88キロ。ハッキリと数字でコンディション向上を表した。ちなみに、この年にレギュラーに定着し、盗塁王(29)、打率2割7分3厘、138安打、14本塁打、ゴールデン・グラブ賞と全ての結果がキャリアハイを示した。

 以後は高い意識でチームのリーダー的存在で年々キャリアを積み重ね、チームの3年連続優勝のけん引役として貢献し、個人的にもほとんどの部門で自己最高の打撃成績と併せて6年連続6度目のゴールデン・グラブ賞。契約更改で年俸が大台の2億円超となり、危惧していた通りFA移籍で巨人入りした。末恐ろしい気もするが、野球に真摯に立ち向かう姿勢は本物。新井先輩を追い越し、「アスリートメンバー」最高実績の金本に迫る日が待ち遠しいほどの存在となった。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。